この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。ぜひ、明日からの臨床にお役立てください。
さて、脳卒中をはじめとするリハビリテーション現場において「お尻上げトレーニング」というのは用いられることが最も多い運動療法の一つです。
ただし重要なことが一つありまして、それは「やり方を意識しなければお尻の筋肉は働かない」ということです。
そこでこの記事では、「お尻の筋肉を効果的に働かせるために有効な方法」というテーマでお送りさせていただきたいと思います。
療法士の皆さんには日々の臨床で、当事者の皆さんには今日からの自主トレにぜひ活かして頂けると幸いです。
【脳梗塞リハビリコラム】お尻上げ運動の効果的なやり方を徹底解説!
お尻上げ運動(ブリッジ)は膝を曲げる角度で活性化する筋肉が変わる
ブリッジ運動は、仰向けに寝た状態からお尻を上に挙げる動作を行います。
このエクササイズは多裂筋や股関節伸展筋(大殿筋やハムストリングス)といった筋肉の強化に役立ちます。
ただし、この効果を最大に発揮するにはいくつか気をつけなければならない点があり、その一つが『膝関節の屈曲角度』です。
膝を深く曲げると『大殿筋』優位
具体的には、膝関節が深く曲がっている場合、この時ハムストリングスは付着している部分が近づくことによって緩みやすくなります。
その結果、相対的に大殿筋が主に活動する状態となりやすいです。
逆に膝関節の屈曲が浅いと、その役割が逆転しハムストリングスが主に働きます。
つまり、皆さんが想像する「お尻の筋肉」として想像するのが仮に『大殿筋』なのであれば、しっかりこの筋肉を使わせたい場合は「できる限り膝を深く曲げる」というのがすごく重要になります。
お尻を高く挙げようとするのは逆効果
次に、ブリッジを行う際の声掛けや意識について考えてみましょう。
よくブリッジ運動を行う際に、「お尻を高く上げるように!」と声掛けする場面が見られます。
が、実はこの意識というのは『お尻の筋肉(大殿筋)を鍛える』という観点から見ると逆効果になってしまう場合があります。
というのも、お尻を高く上げる意識をしてしまうと腰椎の伸展が早まり股関節伸展が遅れる傾向にあるからです。(中道ら,2014)
要するに、「腰による代償が入りやすい」ということです。
その結果、主にトレーニングされる筋肉が股関節伸展筋(大殿筋やハムストリングス)ではなく、多裂筋や腸肋筋など腰部や体幹に付く筋肉が主に働いてしまうという結果をもたらします。
お尻の筋肉だけを効果的に強化するためのポイント
ブリッジ動作で大殿筋を最も活性化させるためのポイントは2つあり、それが「開始肢位」と「動作方法」です。
ブリッジ動作で重要な開始肢位
効果的にお尻の筋肉を働かせるために、行って頂きたいのが「両腕を頭部の後ろで組み頭部を持ち上げること」です。
脳卒中後片麻痺などで両上肢を組めない場合、枕などを使用して頭部を高くし腕は胸の前で組むと良いです。
頭部を高くする理由は、頚部伸展によって頭部が床面へ押さえつけられるのを防ぐためです。
そして、腕を胸の前で組む理由は、腕で床面を押す代償が入らないようにするためです。
ブリッジ動作で重要な動作方法
そして「動作方法」については、特に「お尻を高く上げよう」とするような意識を持つ必要はありません。
重要なのは股関節を伸展させることなので、逆にお尻を高く上げすぎると腰回りの筋肉が代償動作として働く可能性があります。
以上2点を取り入れることで、お尻上げ運動(ブリッジ)の効果は最大に発揮されるかと思いますので、ぜひ試してみてくださいね。
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参考文献
1)筋力低下に対するアプローチ.中道ら,2014より引用