筋肉を大きくするには”タンパク質やアミノ酸を摂るタイミング”も重要

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
近年注目されている「リハ栄養」という視点
リハ栄養とは「リハビリテーション栄養」の略で、リハビリを必要としている障害をお持ちの方、ご高齢の方に対して、リハビリの内容を考慮した栄養の管理と、栄養状態を考慮したリハビリを行うことを指します。
栄養が不足している状態で運動を行うと、体は筋肉を分解してエネルギーを補充しようとするため、筋肉をつけるには運動だけでなく栄養も重要です。
筋肉=タンパク質というイメージはありますが、タンパク質だけでなくアミノ酸(BCAA)も筋肉の合成(作り出すこと)の活性化に一役買っています。
ここで皆さんに質問ですが、朝食にタンパク質は摂れていますか・・・?
何かと忙しい朝食はパンと牛乳だけ・・・。むしろ食べていません・・・。等々、タンパク質があまり摂れていないこともあるのではないでしょうか?実は、西洋諸国およびアジア諸国の食生活調査から、朝食中のタンパク質摂取量は通常少なく、1日を通してさまざまな食事にわたるタンパク質の分布は偏っている(例:夜ご飯にタンパク質をたくさん摂って、朝はほとんどタンパク質を摂っていない等) ことが明らかになっています。
朝食にタンパク質を摂る重要性と”体内時計”の関与について
過去の研究において、朝食および昼食でのタンパク質補給は、高齢の方の骨格筋量(いわゆる手足の筋肉の量)を増加させると報告されています。したがって、タンパク質の摂取量だけでなく、食事ごとのタンパク質の分布も筋肉の成長に重要であるという仮説が立てられています。
しかし、消化吸収の能力や代謝の活動というのは昼夜で変動します。体内時計という言葉は皆さんも一度は耳にしたことがあると思いますが、とある研究ではねずみの骨格筋(腕や足などの筋肉)におけるアミノ酸の代謝は昼や夜で変動しており、それは体内時計によってコントロールされていることが報告されています。
そして、ヒトのアミノ酸の代謝も、一日のうちの時間帯に応じて変化することがわかっています。ということは、食事中のアミノ酸やタンパク質を体内でどう利用するかは、体内時計のシステムによって調節されている、、、つまり朝、昼、夜のどのタイミングでタンパク質やアミノ酸を摂るかで筋肉の成長が変化する可能性があるということが考えられます。
今回紹介する論文は、マウスやヒトのタンパク質摂取のタイミングが筋肉を大きくするのにどう影響しているかを調べたものです。
※本記事では皆様に特に影響のある”ヒトでの研究結果”についてのみをご紹介いたします。

筋肉を大きくするには食事性のタンパク質を摂取する”タイミング”が大事

Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock (2021)

①研究の概要

この研究の結論は以下の通り

食事中のタンパク質の分布(朝・昼・夜いつどのくらい摂ったかの分布)は筋肉の肥大(大きくすること)に影響を与える

BCAA(アミノ酸)はタンパク質の摂取分布(いつ摂るか)の筋肉肥大効果に関与している

タンパク質摂取分布と筋肉肥大の効果には体内時計が必要である

朝食のタンパク質摂取は高齢の女性の骨格筋の機能と相関している

②研究の方法

1.対象者と特性

対象:

  • 65歳以上の女性60名(年齢69.6±0.6)

特性:

  • 非喫煙者、心血管疾患の既往歴なし、内服薬なし、BMI(体格指数)30kg/m 2未満
  • 定期的な運動習慣はないが健康体な方(※一般的な高齢の日本人女性よりも約38%高い歩数で活動していた方)
  • 筋肉量の維持、増大に必要な1.0~1.2g/kg(体重)/日の要件を満たしていた

2.実験方法

グループ分け

参加者が記入した食品摂取頻度質問票(FFQ)から計算されたタンパク質摂取量を使用し、①朝食タンパク質グループ(18名) と ②夕食タンパク質グループ(42名)に分けられ、①グループには朝食に高タンパク質を、②グループには夕食に高タンパク質な食事を摂るようにアドバイスした。

FFQとは、タンパク質をはじめとして妥当性が実証されている一般的な食事評価方法の一つです。

評価内容

  • 筋力:デジタルハンドダイナモメーター(TKK5401、武井科学機器株式会社)によって立位での両手の握力を測定
  • 筋肉量推定:直接セグメント多周波数生体インピーダンス分析(InBody230 InBody社)
  • 食事評価:FFQに加え1食分の食事の画像を含め、1食あたりの主要なタンパク質源から算出したタンパク質量を計算
  • 活動量の測定:3軸加速度計(Active style Pro HJA-750C、オムロン社)を1週間装着(シャワーを浴びているときを除いて毎日常に装着)
  • その他の評価項目:片足立ちバランステスト、Timed Up & Go Test、3m歩行速度

※活動量に関しては、加速度の大きさと頻度を測定することで活動によって生成された運動強度のレベル(MET)を0~8で10秒ごとに決定。少なくとも平日4日間と週末1日の計10時間以上加速度計を装着した参加者のデータを分析。さらに、中程度から激しい身体活動(MVPA)の持続時間を毎日計算し、毎日の平日と週末の活動の加重平均を計算することで1週間の活動量を推定。

統計解析と手法

  • 統計解析:SPSS Statisticsバージョン25
  • 全てのパラメーター:コルモゴロフ・スミルノフ検定を用いて正規分布または非正規分布について検定
  • 両グループの各食事におけるタンパク質摂取量を比較:二元配置反復測定法の分散分析
  • 両グループの参加者の特性調査:対応のないStudentのt検定
  • 朝食におけるタンパク質摂取率とSMIの関係:ピアソンの積率相関係数を使用。有意差はP<0.05

③結果

  • 筋肉量: 朝食に多くタンパク質を摂ったグループ > 夕食に多くタンパク質を摂ったグループ(あくまで傾向があった)
  • 骨格筋指数(SMI)と握力: 朝食に多くタンパク質を摂ったグループ > 夕食に多くタンパク質を摂ったグループ(有意な差)

加えて、SMIと朝食タンパク質摂取量と総タンパク質摂取量の割合との間には有意な正の相関が認められました。

両グループの間で身長、体重、脂肪量、BMI、身体機能、食事摂取量、身体活動量に有意差はありません。

つまり、両グループで違いがあるのはタンパク質を朝食に多く摂ったか、夕食に多く摂ったかとなります。

まとめると、朝食に多くタンパク質を摂ったグループの方が筋肉量は多い傾向に、そして骨格筋指数と握力は有意に高いということになります。そして、タンパク質を多く摂取する、朝食に摂取するほど、骨格筋指数が高くなるというデータが得られました。

※この研究で行われたマウスの実験においても同様のデータが得られています。

結論

朝食にタンパク質を摂取することで筋肉量や骨格筋指数などが向上する可能性があります。

本研究の対象者は、定期的な運動習慣はないものの60代女性の一般的な歩数よりも高い歩数で動いている方のデータです。そのため、冒頭でもお話した通り運動と食事のセットが筋肉量の維持や向上に重要であると考えられます。

この研究の中のマウスのデータでは、朝食のタンパク質摂取は負荷がかかった筋肉に影響すると報告しています。今回の対象者の方々には運動の指示はしていないため一概には言えませんが、筋力トレーニングをしているような場合だと、鍛えている部分がより大きくなる可能性も考えられます。

今回は直接脳や神経に関わる記事ではありませんが、リハビリの効果をより得るためには食事のタイミングも重要であるということが言えるかと思います。明日からの食事、是非気にしてみてください。

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