この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患(脳梗塞・脳出血・脊髄損傷など)により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
今回は、『脳卒中後における運動機能回復のためのリハビリテーション戦略』というテーマで、脳卒中後に必要なリハビリテーションの手順や方法論について解説していきたいと思います。
特に理学療法士の方や作業療法士の方向けの内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧いただき明日の臨床に活かして頂けると嬉しいです。
脳卒中後における運動機能回復のためのリハビリテーション戦略
脳卒中後発症初期から3ヶ月までに行いたいリハビリ
私たち人が手足を円滑に動かせるのは、脳内にある皮質脊髄路という伝導路(神経を介した情報)が動かしたい筋肉に対して指令を送ることで成り立っています。
しかし、脳卒中を発症するとこの皮質脊髄路が絶たれ、手足に運動の指令が送れなくなります。これが脳卒中後に『運動麻痺』が生じる原因です。
そして、この皮質脊髄路は発症後急性期から急激に減衰し約3ヶ月で消失すると言われています。
ただし、これは運動麻痺によって麻痺側の手足を使わないことによって生じる退行性変化であることから、(皮質脊髄路の)減衰を最小限に食い止めることも可能です。
そのためには、特に発症後急性期〜3ヶ月以内のリハビリテーションにおいては一次運動野の興奮を促す(皮質脊髄路の発火)ようなリハビリの設計がとても重要となってきます。
脳卒中後に推奨されている3つのリハビリ戦略
Shsrmaらは、脳卒中後の運動機能回復に効果的な介入を3つの枠組みで提唱しています。
それがこちら。
② 運動実行による皮質脊髄路の発火
③ 感覚フィードバック
① 運動先行型の脳活動
運動先行型の脳活動を具体的に、臨床の方法論に落とし込むとしたら『運動イメージ訓練』や『運動観察療法』がこれにあたります。
② 運動実行による皮質脊髄路の発火
運動実行による皮質脊髄路の発火、これを臨床の方法論に落とし込むならば『CI療法』や『課題指向型訓練』があてはまります。
つまり、先ほど脳卒中後急性期〜3ヶ月の間においては皮質脊髄路の発火を促すリハビリテーションをデザインした方が良いと述べましたが、実際に方法論に落とし込むと上記で挙げている『CI療法』や『課題指向型訓練』が有効になってくるというわけです。
ただし、注意点があります。
それは、脳卒中発症後急性期もしくは重度の麻痺がある患者様に対して『CI療法』はそこまで効果が高くないというエビデンスがあることです。
確かにCI療法のような麻痺側の強制使用を行う訓練は皮質脊髄路の発火を促しやすい一方で、課題の難易度が高すぎ麻痺側に対する嫌悪感が増してしまう(学習性無力感)というケースもあります。
そのため、CI療法を実施する際には発症からの時期、そして対象者の運動機能の程度を鑑みながら実施を検討すると良いかもしれません。
③ 感覚フィードバック
感覚フィードバックを実際の臨床に落とし込むならば、例えば『電気刺激療法』や『徒手療法』といった介入がこれに当てはまるかと思います。
実は、触覚をはじめとする感覚フィードバックを繰り返し行うことによって、麻痺側の運動機能が向上するという研究がいくつかあり、そのメカニズムとしては、運動指令の出発点である『一次運動野』と感覚の中枢部である『体性感覚野』が機能的に連結しているという事実がその背景として考えれれています。
また、もう一つ感覚フィードバックが運動機能の向上に寄与する理由としては、一次運動野そのものにも感覚情報が入力されるからです。
具体的には、一次運動野はブロードマンのエリアでいうと4野になりますが、実はこれは『4a野』と『4p野』というふうに2つに分けられます。
そして、4a野と4p野にはそれぞれ感覚情報が到達する事がわかっていて、4a野には『筋・関節の固有感覚』が、4p野には『皮膚感覚』が豊富に入力されるのです。
このように、本来運動実行の中枢と考えられていた一次運動野にも感覚情報が入力されることから、感覚フィードバックによっても運動機能回復が図れるということが近年明らかになってきています。
脳卒中後リハビリテーションに有効なたった一つの治療法はない
脳卒中後のリハビリテーションで大切なこと。
それは、発症からの時期や病態を把握し「どの機能の回復を果たしたいのか?」という明確な問いに対して、適切な治療方法を意思決定することです。
ゆえに、どの病態にも有効なたった一つの治療法などは存在せず、感覚フィードバックが乏しいのであれば電気刺激や徒手療法を、運動のイメージはできるが麻痺側の随意性そのものが乏しい場合は、課題指向型訓練をメインに据え置き皮質脊髄路の発火を促すような手続きを踏む。
こういった、病態に基づくリハビリテーションの選択が非常に重要になってくると私たちは考えています。
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