この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
今回は、脳卒中のリハビリにおいて「立ち上がり練習の方法に効果の違いはあるのか?」というテーマでお送りいたします。
リハビリの現場でもよく取り入れられている「立ち上がり練習」ですが、当事者の皆様はどのような理由で行われているかご存知でしょうか?
また療法士の皆様は、環境設定や方法などを工夫した上で、効果の違いを当事者の方に説明を行い実施できていますでしょうか?
この記事では、そのような疑問を解説していきます。
【脳卒中リハビリ】立ち上がり練習の方法に違いはあるの?
はじめに
今回、ご紹介する論文はこちらです。
The effect of foot position on erector spinae and gluteus maximus muscle activation during sit-to-stand performed by chronic stroke patients.Nam I,2015
対象者
- 脳卒中片麻痺患者15名
組み入れ基準
- 発症より6ヶ月以上経過している
- MMSEスコア24点以上
- Trunk Impairment Scale(TIS)座位の項目が8点以上
- Brunnstrom Stageの下肢のステージが4以上
除外基準
- 起立能力に影響を及ぼす整形疾患または慢性疼痛を有する場合
- コントロールされていない高血圧
- 脳卒中以外の神経疾患を有する場合
研究方法
起立方法(足の位置)を3パターンに分けて5回連続で行い、視覚で確認できるように鏡を用いて実施しました。
筋肉の活動を知るため、立った時に大殿筋と脊柱起立筋の筋電図を測定しました。
起立方法の種類
①足の位置が左右対象
②体から近い方に非麻痺側を引いた状態(非麻痺側優位)
麻痺側より手前に、非麻痺側を引いた状態
③体から近い方に麻痺側を引いた状態(麻痺側優位)
非麻痺側より手前に、麻痺側を引いた状態
※②、③は麻痺側の膝関節を90°に設定
アウトカム
- EMG(表面筋電図)
結果
以下に表記します。
筋肉 | ①左右対称 | ②非麻痺側優位 | ③麻痺側優位 | |
大殿筋 | 麻痺側 | 149.8 | 147.3 | 180.7 |
| 非麻痺側 | 156.9 | 151.2 | 173.5 |
脊柱起立筋 | 麻痺側 | 84.1 | 84.9 | 98.3 |
| 非麻痺側 | 71.5 | 87.9 | 82.5 |
※標準偏差値は、原著に記載
マーカーを引いている部分が有意性を示しました。いわゆる筋肉の活動がみられ、立ち上がり練習の効果があったと言えます。
臨床的解釈
今回の研究から示唆されること…
結論として、脳卒中を患った方の立ち上がり練習は麻痺側を手前に引いた状態、いわゆる『麻痺側優位』で行うことで、より大殿筋が使われやすいということです。
なぜ麻痺側優位の時だけ、筋活動がより向上しているのか?
それはあくまで考察ですが、麻痺を患うと自発的に麻痺側に体重をかけることを避けてしまう傾向に陥りやすくなります。
今回のように麻痺側の足を手前に引くだけで踏ん張らざるを得なくなり力を発揮しないといけない環境になるからです。
そして今回の研究は、慢性期の方を対象に行われていますので発症から日数が経過していても、立ち上がりの方法次第で麻痺側の方の足の踏ん張りを強くする効果が得られやすくなるということです。
『立ち上がり練習』において、大殿筋を使うことが重要なのか?
大殿筋は立つ・歩く上で無意識に体を支えるように使われている筋肉で、バランスをとる時にも大きく関係しています。
大殿筋が弱いもしくは使い方がわからなくなっているなど理由はさまざまです。
立ち上がり練習の方法で、使われる筋肉も変わってきますのできちんと目的や効果を知った上で行う必要があります。
目的や回数・頻度に関しては、以下の記事をぜひ参考にしてみてください。
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明日からの臨床において、参考にしていただけると幸いです。
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