この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 ぜひ、明日からの臨床にお役立てください。
実際の臨床の現場で、脳卒中に限らず『立ち上がり練習』をリハビリの中で取り入れられることが多いと思います。
立ち上がるという動作は、日常生活の中でも必要不可欠な動作であり歩行の前段階にも必要な動作と言われています。また、転倒防止にも繋がる大事な動作の1つです。
その上で、このコラムを読んでくださっている人の中にも、「立ち上がり練習の目的は何なのか?」という疑問を抱いている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方にも、今回は、なぜ脳卒中後に『立ち上がり練習は必要なのか』ということをご説明させていただきます。
ぜひ、目の前の患者様をよりよくするための臨床につなげていただけると幸いです。
【脳卒中リハビリ】なぜ立ち上がりの練習は必要なの?
本日ご紹介する論文
Interventions for improving sit-to-stand ability following stroke.Pollock A,2014
研究の目的
脳卒中後の座位・起立能力の改善を目的とした介入の有効性を検証することです。
対象者
このレビューでは、13件の研究(脳卒中患者様603人の参加者)が基準を満たしており、11件の研究のデータがメタ分析に含まれました。
13件の研究のうち12件はリハビリテーション介入したものであり、1件の研究(参加者9人)は座位から立位へ姿勢が変化する影響を調査しました。
評価した方法論的観点に関するすべてにおいては、偏見のリスクが低いと判断されたランダム化比較試験の大部分に、起立動作・歩行が自立してできる参加者が含まれていました。
研究方法
姿勢・椅子のデザイン(高さも含む)を変更することで、立ち上がり動作能力に影響を与えることを目的としました。
今回の介入の目的には、座ったり立ったりする能力を改善すること、座って立つ動作の反復練習が設定されていました。
結果
結果を表にまとめて記載します。
結論から言いますと、時間・左右の対称性に関しては、リハビリ介入によって改善されたという結果が出ています。
すなわち、左右の対称性・座位から立位までは全て立ち上がりの要素に含まれますので、立ち上がりの練習は必要ということにつながります。
結果 | 治療効果 (95% CI) | 参加者数(研究) | 証拠の質 (GRADE) | コメント |
---|---|---|---|---|
自立した座位から立位への能力 | OR 4.86 | 48名(1研究) | ⊕⊝⊝⊝ | 効果については、さらに研究が必要 |
時間 (座位から立位まで) | SMD -0.34 | 346人 (7研究) | ⊕⊕⊕⊝ | 感性分析や追跡調査でも効果の方向が一致している |
左右の対称性 | SMD 0.85 | 105人(5研究) | ⊕⊕⊕⊝ | 感性分析や追跡調査でも効果の方向が一致している |
転倒 (転倒した参加者数) | OR 0.75 | 319人 (5研究) | ⊕⊕⊝⊝ | 5つの研究のうち3つには議論する必要がある |
CIは信頼区間、ORはオッズ比、SMDは標準化平均差
臨床的解釈
今回の結果から言えること。
それは、立ち上がり練習は脳卒中患者様にとって必要なリハビリになるということです。結果にもあった通り、起立にかかる時間と左右の対称性には関係があると言えるからです。
ただ、関係があるからと言ってただただ立ち上がり練習を行うのではなく、方法・頻度・回数にこだわって行う必要があると思います。
その方法、頻度や回数は何回ぐらいが妥当なのか…?
方法としては、左右の対称性も必要とのことなので、麻痺側・非麻痺側関係なく、両側に荷重を乗せられる環境を作って介入することが必要と言えます。
立ち上がりにかかる時間に関しては、1つの指標として『5回立ち上がりテスト』を評価として行い、数値化するとより患者様にも客観的にわかりやすく結果がみえるのではないかと思います。
この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 脊髄損傷患者におい[…]
また頻度や回数に関しては、この研究のほとんどでも最低週3回以上、時間は30分以上行っていました。回数は、特に指定はありませんでした。
ただ、時間いっぱい繰り返しても疲労感が生じると思いますので、まずは、少ない回数からでもしっかり取り組めるようにして徐々に回数を増やしていくと、行いやすいのではないかと思います。
そのためには、患者様の体力や疲労感をしっかり確認しながら、頻度の目標設定を行い介入できるとより効果的ではないかと考えます。
明日からの臨床に、少しでも活かしていただけると幸いです。
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参考文献
Interventions for improving sit-to-stand ability following stroke.Pollock A,2014