この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 今回のテーマは「歩行は感覚で決まる」です。


実はこれは筋力ではなく、感覚の問題かもしれません。
歩行は「感じながら」行われている
歩くとき私たちは、足がどこにあるか・どれくらい体重が乗っているか・どのくらい動いているかを無意識に感じ取っています。これを固有感覚といいます。歩行は筋肉だけで作られるものではなく、感覚と運動がセットで成り立つ動作なのです。
【脳卒中リハビリ】なぜ「ちゃんと歩いている感じ」がしないのか
参考文献
今回の論文は2025年5月に発表された論文です。
研究の背景
脳卒中後の歩行はこれまで、歩行速度や歩幅、筋力といった「結果」で評価されてきました。しかし、歩行を根本から立て直すためには、筋力だけでなく「固有感覚(感覚入力)」との関係に注目する必要性が高まっています。
研究の概要
そこで今回紹介するのが、2025年に発表された包括的レビュー論文です。脳卒中後の固有感覚と歩行機能に関する複数の研究を統合し、その関連や評価方法の違いを含めて全体像を整理しています。
研究の結果
このレビュー論文から、歩行と感覚の関係について主に、以下の5つの重要なポイントが示唆されています。
固有感覚は姿勢制御、バランス、体重配分に関わります。感じられなければ整えにくくなります。
固有感覚の低下は、歩行速度低下、歩幅減少、左右非対称、二重支持時間増加、代償動作の出現と関連することが報告されています。
固有感覚はどの足にどれだけ体重が乗っているかを判断する感覚です。これが低下すると、乗っているか分からない、怖くてかけられない、健側に逃げるといった行動につながる可能性があります。つまり「乗れない」というより、「乗れている感覚が得られていない」状態と考えられます。
固有感覚と運動機能には関連があり、特に荷重下での感覚評価や同側での位置認識において、その関連が示されています。
慢性期では非麻痺側にも固有感覚の低下がみられる可能性があり、歩行は全身的な問題として捉える必要があります。
この研究が示した本質
歩行障害は、筋力だけでなく、感覚入力と運動制御の関係の中で捉える必要があるかもしれません。位置・体重・動きの情報が不十分な状態では、安定した歩行の制御は難しくなります。
リハビリへの応用
以下は、レビューの内容を踏まえて臨床で応用しやすい形に整理した一例です。
感覚を取り戻す3段階
第1段階:位置を感じる
- ゆっくり関節を動かして位置を確認し、同じ位置を再現する。
- 視覚ありからなしへ段階づける。
第2段階:体重を感じる
- 立位で左右の荷重差を感じ、足裏の接地位置を確認し、軽い重心移動を行う。
慢性期では特に足関節の固有感覚が歩行速度や歩幅、そしてバランスと関係する可能性が示されており、足首で体重を感じられるかどうかは、歩行の安定性を考えるうえで重要な要素と考えられます。
第3段階:動きながら感じる
- ゆっくり歩いて感覚を確認し、一歩ごとに足裏(触覚)と位置(固有感覚)を意識する。
触覚と固有感覚は密接に結びついており、ベッド上で個別に鍛えるだけでなく、実際の歩行の中で同時に感じながら使うことが重要とされています。
感覚を意識する練習は、注意力や集中力を使うため非常に疲労しやすく、疲れると感覚はさらに分かりにくくなります。「短時間で集中して行い、疲れたら休む」ことが精度を保つためのコツです。
おわりに
歩行は、足の位置・体重・動きといった感覚情報に支えられて成り立っています。
脳卒中後は、これらの感覚にズレが生じることで、乗れない・怖い・逃げるといった歩行につながる可能性があります。つまり歩きにくさは「力」だけでなく「感覚のズレ」として捉える視点も重要です。
だからこそ、位置を感じる・体重を感じる・動きを感じる、この3つを整えていくことが、歩行改善の一つの手がかりになります。感じにくさは目に見えにくい症状ですが、練習の中で再学習されていく可能性があります。その一歩は、感じることから始まります。
この研究が、皆様の日々のリハビリのヒントになれば幸いです。
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