【脳卒中リハビリ】歩行が遅い・疲れる「本当の理由」ー68名の研究が解き明かした足首の2つのカギー

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 今回のテーマは踵接地と蹴り出しの重要性!」です。

患者様
頑張って歩いているのにスピードが出ない
 
患者様
少し歩いただけでクタクタになる

脳卒中を経験された方の中には このような悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。

2025年5月に発表された最新の研究(慢性期脳卒中の方68名対象)は、センサーを用いた詳細な分析で、歩行の遅さ・疲れやすさを決める本当の要因を突き止めました。

その答えは「足首のたった2つの動き」だったのです。

【脳卒中リハビリ】歩行が遅い・疲れる「本当の理由」ー68名の研究が解き明かした足首の2つのカギー

参考文献

今回の論文は2025年5月に発表された論文です。

The Relation Between Hemiparetic Gait Patterns and Walking Function After Stroke, as Measured with Wearable Sensors.Brice Thomas Cleland, et al.

研究の概要

対象者

  • 慢性期脳卒中の方68名(平均年齢62歳、発症から平均8年)

測定方法

両足と腰に小型センサー(APDM Opal)を装着し、以下の歩きを測定

  • 普段の速さ
  • 10m歩行(最大限速く歩く)
  • 6分間歩行

評価項目

センサーは歩行中の動きをミリ単位で測定し、特に次の4つの特徴を数値化しました。

  1. 蹴り出しの強さ(Toe-off angle)
  2. 踵からの接地(Foot strike angle)
  3. ぶん回し(外回し:Circumduction)
  4. 足の振り上げの高さ(Elevation at midswing)

研究の結果

この研究から以下のことが示唆されました。

蹴り出しの強さ(Toe-off angle)

麻痺側・非麻痺側どちらでも、蹴り出しが強い人ほど速く・長く歩けた。

特に重要な予測因子のひとつであり、踵接地角度と組み合わせたモデルで以下を説明できました。

  • 快適歩行速度:約71%(調整済みR² = 0.71)
  • 最大歩行速度:約69%(調整済みR² = 0.69)
  • 6分間歩行(持久力):約64%(調整済みR² = 0.64)

「最後に後ろへ蹴り出す力」が歩行のエンジンであることが強く示されたのです。

踵からの接地(Foot strike angle

背屈(つま先が上がる)がしっかりでき、踵から接地できる人ほど速く・長く歩けた。

歩行速度には非麻痺側の接地持久力には麻痺側の接地が特に重要でした。

「かかとからトンッと置ける」ことが、省エネでスムーズな歩行につながるのです。

ぶん回し(外回し:Circumduction

外に振るほど一見歩きやすく見えたが、最終的な解析からは除外

代償としては役立つが、ゴールにはならない。

足の振り上げの高さ(Elevation at midswing

歩行速度・持久力と有意な関連なし

単独では決め手にならない。

リハビリへの応用

この研究からは、分かるのは、歩行を大きく左右していたのは足首の使い方だったということです。だからリハビリでも、「どれだけ歩くか」より「どう足首を使うか」を意識することが大切になります。本研究自体は練習方法を直接検証したものではありませんが、結果を臨床に落とし込むと次のような練習が考えられます。

滑らかな足首を取り戻す3つのステップ 

 蹴り出しを鍛える

  • カーフレイズ(つま先立ち)

足で床を押す感覚をつかむ

踵接地をつくる

  • 立ち上がりで「踵に体重を残す」

踵を意識しながら動作を行う感覚をつかむ

その場足踏みで練習する

  • 立ったまま足踏みしながら、「踵から着く」「最後に蹴る」を繰り返す

足首の動きを切り替える感覚をつかむ

おわりに

脳卒中後の「歩行が遅い・疲れやすい」という問題は、脳の障害だけではなく、足首の2つの動きに大きく左右されていました。

踵から接地する

最後にしっかり蹴り出す

このシンプルな2つの動きが、歩行の質と持久力を決めるカギです。

明日からの一歩で「踵からつく」「最後に蹴る」を意識してみてください。そこから、あなたの歩きは確実に変わり始めます。

この研究の成果が、明日のあなたの歩行のプラスになれば幸いです。

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