脳卒中後における手指の動きの変化とリハビリテーション

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

脳卒中後、多くの方に残る後遺症の一つに『指の麻痺』があります。

指は腕や足に比べて神経回路が複雑になっており、それにより後遺症が最も残りやすい部位とされています。

それでは、麻痺によって実際にどれくらい指の動きが少なくなってしまうのか?

今回はその点について海外の研究をベースに解説したいと思います。

脳卒中後における手指の動きの変化とリハビリテーション

参考文献

Thumb and finger movement is reduced after stroke: An observational study.Eschmann H,2019

PubMed

Hand motor impairment is common after stroke but there are f…

脳卒中後に指へ麻痺が残存する割合

脳卒中後、手指の運動障害はよく見られます。重度の場合であれば、脳卒中後6ヶ月で3分の1の人が手首と手指の拘縮を起こします。手指の機能的な動きの喪失は、何年も続く場合がある。

Thumb and finger movement is reduced after stroke: An observational study.Eschmann H,2019より

このように、脳卒中を発症すると特に10度の場合は、高い割合で手指の麻痺が残存する可能性があります。

それでは、具体的にどのくらい健常な人と比べて指の動きが減少してしまうのでしょうか?

事項では、その疑問を実際に検証した本研究の結果から解説していきます。

脳卒中後は手指を動かさない時間がかなり増える

研究の方法

本研究は、健常者15名そして脳卒中後遺症患者様15名を対象として行われた研究です。

そして、2グループの対象者の指の動きを測定器を用いて計測しました。

脳卒中後遺症患者様グループの測定風景
Thumb and finger movement is reduced after stroke: An observational study.Eschmann H,2019より引用

本来、24時間この測定器を装着して指の動きを計測しておく予定だったのですが、「長時間の装着は不快である」という対象者の方の気持ちを配慮し、1日約4時間装着してもらい指の動きを計測しました。

結果

◯指の回転数

脳卒中後遺症グループでは健常者のグループに比べて、親指を含めた手指のケイデンス(回転数)が低いということが明らかになりました。

◯指を動かしている時間

指を一回動かしている間の時間について、脳卒中後遺症グループでは、健常者グループに比べて約4分の1程度しか動かしていないことが明らかになり、これは特に親指以外の指で顕著でした。

※ただし、健常者も指を一回動かしているときの時間はそこまで長くなかった。

本研究の知見から得られるリハビリテーションへの応用

以上の結果から、脳卒中後では指を動かす量や一回で動く時間が大きく低下するということがわかりました。

ただし、ここで特筆すべき点は一回で指を動いている間の時間についてです。

もちろん、脳卒中後遺症患者様はかなり短いということは事実なのですが、一方で健常者においても実は同様のことが言えることがわかりました。

つまり、健常者であっても一回で指を動かす時間というのはそれほど長くなかった(=休止時間が長い)ということです。

これらのことから、脳卒中後の手指のリハビリテーションにおいては…

少なくとも頻繁に動かす必要はある一方で、一回で指を動かす時間はそんなに長くなくても良いということです。

つまり、よくリハビリテーションを行う際に力一杯指を動かそうとしてグーーーーっと力む場面があるかと思いますが、そこまではしなくても良いかもしれません。

脳卒中患者が正常な指の機能を回復するためには,より頻繁に手指を動かす必要があるかもしれないが、一方で正常な手指の器用さや運動機能を維持するためには、一回で長い時間動く必要はないことを示唆している。これらの結果から、脳卒中後のリハビリテーションは、より短時間で指を頻繁に動かしていくことが奨励される。

Thumb and finger movement is reduced after stroke: An observational study.Eschmann H,2019より

 

 

 

 

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