この投稿は、『脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
- 1 1. Doherty KM, et al. Camptocormia in Parkinson’s disease: mechanisms, clinical features, and treatment. Mov Disord. 2011;26(13):2250–2257.
- 2 2.Predictors and pathophysiology of axial postural abnormalities in parkinsonism. Mov Disord Clin Pract. 2025
- 3 3.Martino D, et al. Cognitive and perceptual mechanisms of postural deformities in Parkinson’s disease. Mov Disord Clin Pract. 2014;1:295–303.
【パーキンソン病リハビリ】パーキンソン病と姿勢の変化 ~なぜ起こる?どう向き合う?~
姿勢が変わるってどういうこと?


そんな変化を感じて不安になる方も少なくありません。
パーキンソン病では、次のような姿勢の変化が現れることがあります。
・前に丸まる姿勢 → 「カンプトコルミア」
• 横に傾く姿勢 → 「ピサ症候群」
実は歳のせいだけではなく、パーキンソン病という病気による特有のメカニズムが関係しています。
姿勢の変化には理由があり、理解することで少しずつ改善や予防は可能です。
ここでは、なぜ姿勢が変わるのか、日常生活で出来るリハビリや工夫についてお伝えします。
姿勢変化はなぜ起こるのか?
- 体幹の筋肉のアンバランス
• 病気の左右差(非対称性)が強い方ほど、体幹が傾きやすい傾向があります。
• 多くの場合、「症状が出た側」と反対方向に体幹が傾き、傾いた側の背中やお腹の筋肉は常に緊張(過活動)し、反対側の筋肉は弱くなることがあります。
⇒ この状態は、局所的な筋ジストニア(持続的な異常緊張)の可能性を示唆しています。
• 進行期には筋萎縮や腰背部痛を伴うこともあります。
参考:Doherty KM, et al. (2011)
- 身体の位置感覚(空間認知)のずれ
• パーキンソン病では、脳の「まっすぐ立つ仕組み」がうまく働かず、実際にはまっすぐでも「体が傾いている」と感じることがあります。
• 空間認知や身体の位置感覚の異常も姿勢変化に関与していることが報告されています。
参考:Predictors and pathophysiology of axial postural abnormalities in parkinsonism (2025)
- 薬や病期の影響
• 一部の抗パーキンソン薬(ドパミン作動薬など)が姿勢変化に影響する場合があります。
• 病気が進むほど、姿勢異常が出やすくなる傾向があります。
参考:Doherty KM, et al. (2011)
- 心理面の要素
• 「転びたくない」「小さくまとまりたい」といった心理から、自然と前かがみになりやすくなります。
• 不安や抑うつとの関連も報告されています。
参考: Martino D, et al. (2014)
1. Doherty KM, et al. Camptocormia in Parkinson’s disease: mechanisms, clinical features, and treatment. Mov Disord. 2011;26(13):2250–2257.
2.Predictors and pathophysiology of axial postural abnormalities in parkinsonism. Mov Disord Clin Pract. 2025
3.Martino D, et al. Cognitive and perceptual mechanisms of postural deformities in Parkinson’s disease. Mov Disord Clin Pract. 2014;1:295–303.
リハビリへのヒント
姿勢の変化は、筋肉・関節・身体の位置感覚(空間認知)のずれ・心理の要素が重なって起こります。
ご自宅で簡単にできる練習を紹介
- 体幹の筋肉のアンバランスに対するリハビリ
1. 左右バランスストレッチ(10〜15秒×3回)
• 椅子に座って、傾いた側の胸や背中をゆっくり伸ばす
• 反対側は軽く腹筋や脇腹を引き締める
2. 体幹保持練習(座位もしくは立位で20〜30秒×5回)
• 背もたれや壁に軽く背中をつけ、まっすぐ立つ
• お腹に軽く手を当てて、呼吸とともに体幹を意識
- 身体の位置感覚(空間認知)のずれに対するリハビリ
1. 鏡を使った姿勢確認(1日1〜2回)
• 前後・左右の傾きを鏡で確認しながら、軽く体を整える
2. 床のライン歩行(10〜20歩×2セット)
• 床にテープで線を引き、その上を意識してまっすぐ歩く
3. 運動イメージ(毎回歩行前に行う)
• 「頭のてっぺんから糸で吊られるイメージ」「背中がまっすぐ伸びている」と頭で事前にイメージして歩く
- 薬や病期の影響
• 薬の効果が出やすい時間に、歩行や体幹運動を行う
- 心理面の要素
1. 安心できる環境作り
• 手すりや杖を活用、歩きやすい靴で移動
2. 呼吸とリラックス練習(深呼吸5回×2セット)
• 肩や背中の力を抜く
3. 軽い全身運動(スクワットやつま先立ち、10回×2セット)
• 動く安心感を取り戻す
おわりに
姿勢の変化は、決して「年のせい」ではありません。
パーキンソン病による筋肉のアンバランスや身体の位置感覚のずれ、薬や心理的要素が重なって起こるものであり、病気の影響による自然な現象です。
だからこそ、正しく理解し、適切に対処することが大切です。
今日からできることは、
• 軽いストレッチや体幹の練習
• 鏡や床の線を使った歩行練習
• 呼吸やリラックスで肩や背中の力を抜く
など、小さなことから始めることができます。
身体の変化を正しく理解し、少しずつでもできることから取り組むことが、日常をより安全で快適に過ごす第一歩になります。
焦らず、少しずつ毎日取り組むことで、姿勢が安定し、歩きやすさや安心感が戻ってくる実感が得られると幸いです。
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