活動的な人とそうでない人、脳卒中後の運動機能回復に差はあるの?

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

今回は、ある研究をご紹介したいと思います。

内容は…

脳卒中前に運動はじめ活動的だった人と、そうでない人(不活動)では脳卒中発症後の運動機能の回復に差はあるのか?

というものです。

Association between pre-stroke physical activity and mobility and walking ability in the early subacute phase: A registry-based study.Reinholdsson M,2021

それでは、早速見ていきましょう!

活動的な人とそうでない人、脳卒中後の運動機能回復に差はあるの?

研究の目的

脳卒中前の身体活動は、人や動物の両方において血管の新生や神経可塑性を促進し、これは運動機能の向上や運動回復に寄与する可能性があります。

これまでの研究で、身体活動は脳卒中のリスクを25〜30%減少させることが示されています。

『身体活動』とは、骨格筋によって生み出されエネルギー消費を必要とするあらゆる身体運動と定義されます。

身体活動の種類は主に以下のようなものが挙げられます。

・職業的活動
・スポーツ活動
・コンディショニング活動
・家庭活動
・その他活動

このような、脳卒中前の身体活動と脳卒中後の運動機能回復との関連については現在までほとんど証拠がなく、既に発表されている結果について相反するものも存在しています。

そこで本研究では、脳卒中発症前の身体活動と脳卒中後の『移動能力』『歩行能力』『上肢の運動機能』との関連を調査することを目的に開始しました。

研究の方法

各種アウトカムの定義

まずは、今回アウトカム指標となった『移動能力』『歩行能力』『上肢の運動機能』の定義についてまとめておきたいと思います。

移動能力

寝た状態、座った状態、立った状態での室内移動、ベッド、椅子、車椅子との往復のすべて。

歩行能力

室内で10m以上の自立歩行が可能であること。(歩行補助具の使用は可)

上肢の運動機能

脳卒中に関連する腕や手の障害の有無と程度(力の強さ・感覚・浮腫など)

本研究の対象となったのは脳卒中を発症した患者様1092人であり、そのうち600名(54.9%)の患者は脳卒中発症前に不活動な生活を送っていました。

ただし、その中でも93.5%が自立した移動能力を有し、92.8%が歩行可能な状態でした。

研究の結果

発症前に活動的な人もそうでない人も運動機能は改善する

まず、最初の結果として…

今回約1000人の脳卒中患者様を観察した結果、脳卒中前の身体活動の程度にかかわらず、すべての患者群で『移動能力』『歩行能力』『上肢の運動機能』が改善したことが示されました。

ただ大きな差はなかったものの、脳卒中発症前に活動的だった人の方が『移動能力』『歩行能力』の改善が良好になる結果を示しました。

発症前に活動的な人の方が“早く”改善が見られる

もう一つ明らかになった結果としては…

脳卒中以前に活動的であった人の方が、不活動だった人に比べて発症後『移動能力』と『歩行能力』が早期に回復していったことが分かりました。

発症前の身体活動と発症後の歩行能力の関係

ある研究では、脳卒中前に一回30分を超える歩行習慣がある人では、脳卒中発症後急性期(2〜6日)および脳卒中後1年における歩行速度の速さとバランスの良さと関連していることが明らかになりました。

このように、脳卒中発症以前に運動習慣がある人とない人で回復度合いにそこまで大きな違いはないものの、回復するまでのスピードなどを考えるとやはり発症前に活動的である方が良いと言えます。

最後に

脳卒中は、いつ起こるか分からない病気です。

しかし、もし発症してしまった場合には大きな確率で半身に麻痺が残ってしまいます。

発症してから後悔しなくていいように。

予防、そして仮に発症した時にも回復が早期に図れるよう、今のうちから健康に気を遣っていきましょう。

参考文献

・Association between pre-stroke physical activity and mobility and walking ability in the early subacute phase: A registry-based study.Reinholdsson M,2021

・Effects of premorbid physical activity on stroke severity and post-stroke functioning.Ursin MH,2015

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