【脳卒中リハビリ】腕を動かすときに関わる要素とは?

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。

脳卒中後の上肢のリハビリで、腕を動かす際に体幹の機能や視覚からの情報がどのように影響するか、そしてそれがなぜ重要かを解説します。

多くの方が…

疑問を持つ脳卒中患者様
患者様
寝ていると腕が動くけれど、座ったり立つと動かなくなる
疑問を持つ脳卒中患者様
患者
目で見ながらだと腕を上げられるけれど、見ていないと難しくなる

といった悩みを抱えているのではないでしょうか。

そしてこの記事を読んでくださっている療法士の方々も、どのように介入すればいいのか迷われている方がいらっしゃるかと思います。

この記事では、このような疑問を解決できるような内容となっています。

【脳卒中リハビリ】腕を動かすときに関わる要素とは?

はじめに

今回、ご紹介する論文はこちらです。

The Effect of Trunk Stability Training Based on Visual Feedback on Trunk Stability, Balance, and Upper Limb in Stroke Patients:A Randomized Control Trial.S Yang,2021

対象者

慢性脳卒中患者32名

組み入れ基準

  • 発症から6ヶ月以上経過している
  • 車椅子座位が30分以上可能である
  • 韓国版MMSE(韓国版mini-mental state exam)が21点以上
  • modified Ashworth scale(MAS)が2点以下

除外基準

  • 既往に心臓血管系および上肢に影響を及ぼす整形外科疾患がある方
  • 視覚障害及び視野欠損がある方
  • 直近で同様の研究に参加したことがある方

研究方法

グループ分けの前に、まず「上肢の感覚運動能動的リハビリ訓練(SMART)」を受け、カメラを使って上肢の動きをリアルタイムで確認しました。

その後、2つのグループに分けて測定しました。方法は以下の通りです。

体幹サポートグループ(体幹をサポートした状態の上肢トレーニンググループ)

上肢の支持はテーブルを用いて行い、テーブルの高さは肩関節に制限がないことを確認した後、患者の肩関節屈曲90°に調整しました。

体幹拘束グループ(体幹を拘束した状態の上肢トレーニンググループ)

 肩関節に制限がないことを確認した後、拘束紐を用いて患者を固定しました。

 両グループともトレーニングを1日30分・週3回・合計4週間行いました。

アウトカム

  • 脳卒中姿勢評価スケール(PASS)
脳卒中姿勢評価スケール(PASS)とは
体幹の安定性のテストの1つであり、脳卒中患者の姿勢制御能力をFugl-Meyerバランススケールを用いて評価するためのツールと言われている。
  • Functional Reach Test(FRT)
  • ROM(肩関節屈曲可動域)
  • MMT(上腕三頭筋)
  • Fugl-Meyer Assessment 上肢(FMA-上肢)

結果

各アウトカムにて、体幹を支持した状態の上肢トレーニンググループの方に相関関係がみられました。

結果を表記します。

  • 脳卒中姿勢評価スケール(PASS)
体幹の安定性体幹サポートグループ

体幹拘束グループ

テスト前25.326.1
テスト後28.027
スコアの変化+2.7+1.3
  • Functional Reach Test(FRT)
項目体幹サポートグループ

体幹拘束グループ

テスト前14.814.9
テスト後16.916.0
スコアの変化+2.1+1.1
  • ROM(肩関節屈曲可動域)
項目体幹サポートグループ

体幹拘束グループ

テスト前139.3138.2
テスト後142.1140.3
可動域の変化+2.9+2.1
  • MMT(上腕三頭筋)
項目体幹サポートグループ

体幹拘束グループ

テスト前3.23.5
テスト後3.7

3.7

筋力の変化+0.5

+0.2

  • Fugl-Meyer Assessment 上肢(FMA-上肢)
項目体幹サポートグループ

体幹拘束グループ

テスト前40.744
テスト後44.745.9
スコアの変化+4.0

+1.4

備考:

  • すべての数値は小数点第1位まで表示しています。
  • 小数点以下の数値は四捨五入されています。
  • 各グループ間での変化はプラス (+) が改善を示しています。

臨床的解釈

今回の研究の示唆されること…

結論として、腕を動かすときに視覚からのフィードバックにより誤差や動きの修正が可能になり、体幹機能は腕を動かすことにおいて大事な土台になっているということです。

なぜ体幹機能が必要なのか?

他の先行研究から以下のことが明らかとなっています。

上肢がその長さの範囲内で物体に到達すると、肩と肘が伸び、腕の重心が身体の重心からずれる(Wee.2014)

例えば、腕を伸ばして物を取る時に体幹や肩甲骨が一緒に協力して動くことで腕の動きを手伝ってくれていることにも繋がっています。

反対に体幹を拘束してしまうと、体幹の動きが制限されてしまうので物を取る時に必要な動きが妨げられてしまいます。

そして、物を取るときに視覚からのフィードバックにより自己修正ができるから目からの情報も大切です。

実際にどのようにリハビリに繋げていけば良いのか?

あくまでも私自身の考えではありますが、まずは体幹が捻れたり、倒れたりしながら(代償)でも構いませんのでご自身で上肢を動かす練習を行っていく必要があると感じます。

代償の修正は、セラピストの方と動きを確認したり、第三者の方に動画など撮ってもらうなどして動画を確認しながら修正をしていければ良いかと思います。

動画を確認することで視覚からのフィードバックにより修正することに繋がります。

まずは、上肢の場合はとにかく「動かす頻度を増やす」ことが大切です。ぜひこの記事が少しでも麻痺の回復のお役に立てると幸いです。

参考文献

Trunk restraint to promote upper extremity recovery in stroke patients: a systematic review and meta-analysis.Wee,2014

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