エビデンスの2つの落とし穴

この投稿は、神経疾患特化型自費リハビリ施設『脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、脳卒中等による麻痺の後遺症でお悩みを持つ方、そしてリハビリテーションに携わる医療従事者の皆様に向けて執筆しています。

今回お話しするテーマは「エビデンスの落とし穴」です。

これは、主にリハビリテーションに従事するセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の皆さんにとって非常に大切な内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

ちなみに、「エビデンスの落とし穴」というといくつか列挙できそうなのですが、今回はこの中でも2つに絞ってお伝えしていきたいと思います。

それでは、はじめます。

エビデンスの2つの落とし穴

①エビデンスはあくまで『仮説』でしかない

エビデンスというと何か絶対的に効果のあるもの、もしくはある種『正解である』というようなイメージを持たれるかもしれませんが、実はそうではありません。

『反証可能性』という概念を唱えた哲学者のカール・ポパーは…

「科学(エビデンス)は実験(客観的データ)によって常に反証され得る」 と述べており、これはどんなに“現時点で”優れた説を唱えていようと、それは今の時点の『仮説』であって、今後その仮説が覆る可能性は容易にある。ということです。

実験や観察の結果によって、批判あるいは否定され得るということ イギリスの哲学者ポパーが科学と非科学を分かつ境界基準として提示したもの。『コトバンク』より引用

私たちが関わる領域、例えば脳卒中で例えるならば、数年前まで「一度損傷した脳は回復しない」と提唱されていました。

しかし、「脳には可塑性がある」という研究結果を皮切りに、「脳は回復しない」というそれまでのエビデンスはひっくり変えり、脳卒中のリハビリテーションにおいて麻痺側の回復を目指す方向性は強くなっていきました。

このように、今日まで唱えられている優れたエビデンスも常に反証されうる可能性があるので、いま自分自身が信じている方法や評価が「何もいうことはないくらい正解である。」なんてことはないのです。

そのため、私たちは常に「もっと良い方法はないものか?」と探究する、そんな心構えをもっておくと素晴らしいなと思います。

②事実は事実でないことも多い

これは、レビュー論文(沢山の論文を一つにまとめて何が言えるかを発表した論文)を何本もみてみると気付くかもしれませんが、実はレビュー論文のなかで結構よくみる文言として…

「Aの研究は◯◯であり質が低いため除外した」

「Bでは対象者にばらつきがあるため除外した」

というように、本来世の中に出回っている論文なので一見素晴らしく見える研究にも関わらず、レビューの中では普通に除外されるなんてことがあります。

つまり、これは私自身自戒も込めてですが、「すごい!」と思った研究であっても対象がどうなのか?方法がどうなのか?などなどこの辺りを丁寧に吟味しなければ、案外質が低いものというのはあるのかもしれません。

※ちなみに一般的に質が高いとされるRCTも、レビュー論文の中では除外対象になったりしているものも見ます。

まとめると

「エビデンスが高い」と聞くと、無条件でその結果を信じてしまいやすいが、意外とそれは現時点においての『仮説』であったり、かつ『事実ではない』なんていうこともあります。

そのため、もし余裕があればその研究の質をきちんと吟味したり、「他に良い方法はないか?」ということに思考を巡らせることがとても重要になってくるかもしれません。

 

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