この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
【脳卒中リハビリ】自宅で行うおすすめのリハビリ方法
脳卒中のリハビリは退院後こそ大事
超高齢化社会を迎えている我が国において、医療にかかるお金は年々増加しており、現在その規模は約30兆円となっています。そして、このうち高齢者に係る医療費は約10兆円となっており、これは医療費全体の1/3を占めています。(年々その割合は上昇傾向)
〜医療制度改革の課題と視点〜厚生労働省
こうした背景を受け、近年は医療費削減の取り組みの一つとして『入院期間の短縮』が進められ始めています。
これは脳卒中患者様も例外ではなく、入院期間そのものは短くなる一方、退院後は介護保険サービスを活用しながら継続してリハビリを進めていくということが推奨されてきています。
つまり、今までは入院期間中に目一杯時間を使ってリハビリが行えていましたが、近年は退院後であってもまだまだ回復の余地が残った状態でリハビリを続けていくというケースが増えています。
その結果、退院後に在宅でリハビリを継続している方であったとしても麻痺の改善が図れたといったケースの報告がかなり増えてきています。
実際に以下の論文には…
脳卒中後の在宅リハビリは少なくとも病院で行う治療と同等の効果があります。
Effects of home-based mirror therapy and cognitive therapeutic exercise on the improvement of the upper extremity functions in patients with severe hemiparesis after a stroke: a protocol for a pilot randomised clinical trial.Gonzalez-Santos J,2020
といった報告が上がっています。
このように、近年は『脳の可塑性』という神経学的な知見を皮切りに、発症から数年経過していたとしてもきちんとリハビリを続けていけば麻痺の改善が図れるということがわかってきています。
そこで、今回は現在脳卒中を患い今後もっと麻痺の改善を図りたいと強く思う皆様向けに、自宅で1人で行える自主トレ方法を一つご紹介したいと思います。
慢性期でも効果的とされるリハビリ『ミラーセラピー』
今回ご紹介するリハビリ方法は『ミラーセラピー』です。
実は、このミラーセラピーは脳卒中後のリハビリにおいてはよく用いられることが多く、その特徴としては「慢性期にも効果が出やすい」という数少ないリハビリ方法の一つです。
実際に以下の研究では脳卒中発症から6ヶ月以上経過し、かつ上肢(腕や手)に重度の麻痺が残存した患者様を対象にミラーセラピーを実施したところ大きな改善を図ることができています。(Colomer C,2016)
MT is a therapeutic approach that can be used in the rehabil…
ミラーセラピーとは?
ミラーセラピーとは、鏡を用いることで動きにくいはずの麻痺側の手があたかも「動いている」という錯覚が生じ、これにより損傷側の脳が活性化し始めるリハビリのことです。
どれくらい行う必要があるのか?
ミラーセラピーを用いた臨床研究は世界中でみると沢山あり、それらを全て踏まえると頻度と実施時間はおおよそこのくらいになるかと思います。
実施する頻度
▶︎週3回〜7回(できれば毎日が好ましい)
一回の実施時間
▶︎一回15分〜30分
頻度は最も大切で、週1〜2回程度という研究はほぼなく少なくとも週3回は行っていきたいところです。
鏡はどうやって準備する?
肝心の『鏡』ですが、これに関しては100圴の鏡でOKです。
大きさは反対の手が隠れるくらいのものが良いかなと思います。
ミラーセラピー専用ボックスもある
安価にミラーセラピーを行う方法としては市販の鏡を利用するというのが最もやりやすいですが、実はミラーセラピーの専用ボックスというのも販売されています。
やや高価ではありますが、麻痺側の手もしっかり隠れるので「まるで麻痺側の手が動いているよう…」という錯覚は生じやすいかと思います。
ちなみに、当センターではご利用のお客様に対してこのミラーボックスを無料で貸し出しており、自宅での自主トレーニングに存分に活用して頂いております。
最後に
脳卒中(脳出血・脳梗塞)によって生じた麻痺が回復していくということが明らかになってきた現代。
もっともっと、その事実を多くの当事者の皆様に知っていただくために私たちは引き続き発信を続け、同時に麻痺のリハビリも前に進めていきたいと思っております。
少しでも麻痺に悩む皆様の伴走者になれるよう、これからもより良いリハビリサービスをご提供できるよう日々研鑽を続けて参ります。
なお、ご質問等に関してもいつでもお待ちしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
参考文献
・Effects of home-based mirror therapy and cognitive therapeutic exercise on the improvement of the upper extremity functions in patients with severe hemiparesis after a stroke: a protocol for a pilot randomised clinical trial.Gonzalez-Santos J,2020
・Mirror therapy in chronic stroke survivors with severely impaired upper limb function: a randomized controlled trial. Colomer C,2016