この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
脳卒中後における上肢麻痺のリハビリを行う上で、機能回復を目指すために片方(麻痺側)の動きに焦点を当てることは多いです。
私自身も実際にそう考えていました。しかし、今回ご紹介する論文を読んだことで上肢麻痺に対する考え方は変わってきました。
結論から言うと、「両手を使った方が良いケースがある」と言うことです。
この記事では、上肢の機能回復を行う上で「なぜ両方一緒に動かす必要があるのか?」その点にフォーカスを当てたお話しをしていきます。
【脳卒中リハビリ】上肢麻痺の運動は、両方一緒に動かすことがポイント!
はじめに
今回、ご紹介する論文はこちらです。
Influence and signficance of bilateral upper-extremity training on recovery of upper-extremity motor function for hemiplegic patients with mild-moderate cerebral apoplexy:a randomised controlled study.Hongmel L,2022
対象者
- 2018年から2020年までに脳出血を発症された方160名
組み入れ基準
- 片麻痺、言語・嚥下障害、感覚障害、半側空間無視、協調運動障害がある方
- CTもしくはMRIで診断が確定している
- 初めての発症でなおかつ発症より1ヶ月経過していること
- 意識障害・認知機能障害がない
- ICを受けて署名されている
除外基準
- 重度の認知機能障害・運動機能障害・感情障害のある方
- 視覚障害のある方
- 呼吸不全
- 鬱血性心不全
- 活動性の肺疾患および肝性腎不全
- 悪性腫瘍
- リウマチ性疾患・膠原病・骨折
研究方法
対照群と実験群の2つのグループにわけて行われ両方のグループに、血圧降下、抗凝固、血糖コントロール、神経萎縮などの薬物療法や対症療法が実施されました。
対照群
アウトカム
- Fugl Mayer Assessment Upper Extremity Scale(FMA-UE)
- Upper Extermities Functional Test(UEFT)※上肢機能の評価スケール
- Modified Barthel Index(MBI)
- Brunnstrom Recovery Stage(Brs)
結果
今回は以下に表記していきます。
- Fugl Mayer Assessment Upper Extremity Scale(FMA-UE)
グループ | 治療前 | 2週間後 | 4週間後 | 6週間後 | 8週間後 |
対照群 | 15.16 | 17.45 | 21.63 | 26.59 | 29.26 |
実験群 | 15.31 | 17.56 | 24.05 | 28.51 | 30.19 |
- Upper Extermities Functional Test(UEFT)
グループ | 治療前 | 2週間後 | 4週間後 | 6週間後 | 8週間後 |
対照群 | 31.76 | 33.02 | 40.26 | 47.39 | 52.36 |
実験群 | 32.95 | 35.54 | 44.85 | 51.56 | 55.62 |
- Modified Barthel Index(MBI)
グループ | 治療前 | 2週間後 | 4週間後 | 6週間後 | 8週間後 |
対照群 | 38.19 | 40.26 | 48.65 | 53.48 | 57.09 |
実験群 | 37.95 | 41.56 | 52.49 | 56.98 | 61.29 |
- Brunnstrom Recovery Stage(BRS)
グループ | 治療前 | 2週間後 | 4週間後 | 6週間後 | 8週間後 |
対照群 | 35.05 | 43.80 | 58.36 | 65.15 | 71.55 |
実験群 | 35.11 | 44.85 | 59.99 | 67.13 | 74.55 |
全ての評価項目において、8週目(研究終了時)に実験群が対照群と比較して点数の向上がみられています。故に実験群の方が上肢機能の改善がみられていると言えます。
臨床的解釈
今回の研究から示唆されること…結論として、上肢のリハビリは麻痺側のみで運動を行うよりも『両側同時に運動を行う方が良い』ということです。
なぜならば、人間の脳の機能に関係があると言えます。
人間の脳は、左右に分かれていてその脳をつなぐために「脳梁」と呼ばれる部分があります。
この脳梁があるおかげで、左脳と右脳は情報をやり取りし合うことができます。
そして両方の脳が協力して動いたり、あるいは片方の脳が働いているときに反対側の脳が働きすぎないように調整もしています。
このことを踏まえた上で、再度今回の結果と結びつけると両手で行う方が効果が得られやすいというわけです。
では、どのように行えば良いのか?
例えば肩の上げ下げや肘の曲げ伸ばしを、両側同時に行うだけで構いません。
”両方一緒”にということが凄く大切になってきます。
道具がなくてもご自身のお身体でできる運動となっていますのでぜひお試しください。
今回の記事が、少しでも今後の運動の参考になると幸いです。
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