脳卒中後に生じる感覚障害と運動機能の関係

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

今回は、『感覚障害の有無と運動麻痺の関連性』というテーマでお伝えしていきたいと思います。

実は、脳卒中患者様の3人に2人は上肢(腕や指)の感覚-運動障害を経験し、日常生活において上肢を使うことが制限されるという報告があります。(Sarah Meyer,2016)

中でも脳卒中後、感覚になんらかの障害が残ってしまう割合は最大89%と言われている。(Sarah Meyer,2016)

このように、脳卒中後は感覚や運動の麻痺が生じてしまいますが、中でも感覚障害は多くの方が経験する症状です。

そして、中には「感覚が悪いから動かないんだ」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そうすると、「一体いつこの麻痺した感覚は良くなるんだろうか…」と先の見えない不安に悩まされることもあるかと思います。

そこで、本記事では…

脳卒中発症後、急性期〜慢性期までの患者様を実際に追いかけて感覚障害と運動麻痺の関係性を明らかにした研究をご紹介します。

これによって、「感覚障害の程度がどれほど運動に影響するのか?」という点がよりクリアになるかと思います。

脳卒中後に生じる感覚障害と運動機能の関係

研究の概要

研究の対象者

はじめに、今回参考にさせて頂いた論文はこちらになります。

Associations Between Sensorimotor Impairments in the Upper Limb at 1 Week and 6 Months After Stroke.Sarah Meyer,2016

研究の参加者は、ベルギーの2つの大学病院の急性期脳卒中病棟から募集されており対象となったのは、急性期(1 週間未満)の初発脳卒中患者様。

上肢の運動障害および体性感覚障害があり、研究の実施に十分な協力が得られた成人32名が本研究の対象とされました。

※年齢の中央値は68歳
※84%がは虚血性脳卒中(脳梗塞)
※72%が左片麻痺

研究の進め方

参加者の体性感覚障害と運動障害の評価は、最初の1週間(脳卒中後4-7日)と6か月後の計2回評価を受けました。

計測者は本研究において訓練された研究者1名がすべてのデー タ収集を行っています。

使用された評価スケールは以下です。

体性感覚の評価スケール
・Erasmus-modified Nottingham sensory assessment(Em-NSA)
・触覚閾値テスト
・母指探索テスト
・二点識別覚テスト
・Nottingham sensory assessment (NSA)

運動機能の評価スケール
・Fugl-Meyer Assessment(FMA)
・Motricity Index(MI)
・Action Research Arm Test(ARAT)

研究の結果

感覚について

対象となった脳卒中患者様の体性感覚機能は、最初の1週間で上肢の体性感覚機能が低下したが脳卒中6ヶ月後ではすべての体性感覚のアウトカム指標で有意な改善がみられました。

ただし、ここでポイントとなるのは…

確かに脳卒中発症時に比べて体性感覚機能が改善しているものの、それは完全回復というわけでなく、6ヶ月後においてもまだまだ少なからず感覚障害が残っていたという事実です。

多くの被験者が体性感覚障害から回復している が、半数以上の被験者が体性感覚障害を残している。

Associations Between Sensorimotor Impairments in the Upper Limb at 1 Week and 6 Months After Stroke.Sarah Meyer,2016

つまり、感覚障害自体は脳卒中から半年経過しても完全に良くなるわけではなく、やや残存してしまうケースが多いということを表しています。

では、その一方で運動機能はどうなのでしょうか?

運動について

運動機能も感覚と同様、脳卒中発症早期の時点では著しく低下していたものの、6ヶ月後には多くの方が最初よりも改善を示していました。

ただし、感覚障害と異なるのは…

運動機能においては、6ヶ月の時点でほとんどの方が大幅に改善を遂げていたという点です。

つまり、感覚機能自体は多少の障害を残しているものの、運動機能に関してはかなり伸びていくという結果が出たのです。

感覚が悪いことにそこまで固執する必要はないかもしれない

今回の研究で明らかになったこと、それは感覚障害というのは脳卒中を発症すると程度の差はあれ多くの方が経験する症状の一つです。

これ自体は、今まで言われていたこととほぼ変わりません。

しかし、一つ異なること。

それは、感覚障害があるからといって運動麻痺自体の回復が阻害され続けるかというとそうでもないことがわかったのです。

つまり、現時点において仮に感覚障害が重度だとしても、運動機能自体は別の感覚(視覚やその他の体性感覚)で代償することによって、改善する可能性は十分あるということです。

この知見が、多くの脳卒中当事者の皆様の希望の一つになれば幸いです。

参考文献

・Associations Between Sensorimotor Impairments in the Upper Limb at 1 Week and 6 Months After Stroke.Sarah Meyer,2016

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