脳卒中の程度と痙縮出現の関係性

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

脳卒中後に合併症の一つとして生じるのが『痙縮』です。

痙縮は、脳卒中による神経系の不具合によって筋肉が意思とは無関係に収縮し、それによって関節が硬くなってしまう現象です。

これまで、この痙縮が生じる要因としては脳卒中発症時の病巣の大きさや、病変部位がそのリスク因子として考えられていましたが、それも確実なものとはいえませんでした。

そこで今回は、昨年(2021年)発表された論文をもとに…

痙縮が生じる要因(リスク因子)について解説していこうと思います。

ご興味ある方は、ぜひ最後までご覧ください。

脳卒中の程度と痙縮出現の関係性

脳画像を使って脳卒中の病巣や部位を把握

はじめに、今回ご紹介させていただく論文はこちらです。

Early brain imaging predictors of post-stroke spasticity.Ri S,2021

今回行われた研究は、脳卒中を発症した103名の患者様を対象とし、発症から7日以内、そして3ヶ月後の2回にわたって脳画像検査を行いました。

その結果、23名(22.3%)の患者様に痙縮が認められ、80名(77.7%)には筋緊張の増加(痙縮)は認められませんでした。

病巣の大きさと痙縮の関係

脳卒中発症時の、病巣の大きさと痙縮の強さの関係ですが…

これまでの研究で、病巣の大きさは痙縮発症の危険因子として示唆されていましたが、病巣の大きさだけでは痙縮との相関があまり高くないことが判明しました。

なぜならば、今回の研究では痙縮を発症していない患者様の20%以上が、なんと5cm以上の大きな病巣体積を有していたからです。

よって、脳卒中発症時に病巣が大きいからといってその後痙縮がドンと出現するかというと、案外そうでもない可能性があるようです。

病巣の体積だけでは、痙縮出現の信頼できる予測因子とは言えない。

ただし…!

これには続きがありまして、シンプルに病巣の大きさだけで見ると痙縮との関連性は低いのですが、発症部位によってはその病巣の大きさが大きなリスク因子になる可能性があるようです。

次はその点について解説していきます。

発症部位&病巣の大きさと痙縮の関係

次は、脳卒中を発症した部位、そして病巣と痙縮の関係についてです。

まず、今回の研究から痙縮が出現しやすい病巣は主に以下の脳領域であることが明らかになりました。

①錐体路(運動指令の通り道になる領域)
・視床
・内包
②大脳基底核
・被殻

そして、特に①に関連する脳領域で発症した場合には、その病巣の大きさが痙縮出現に大きく関わっているようです。

具体的には、0.5㎝以上3㎝未満の病変体積では痙縮の発生リスクが低い一方で、①の脳領域内で3㎝以上の病変体積は痙縮が出現する予測因子となることが明らかになりました。

また、純粋に大脳皮質にのみ病巣がある場合には、痙縮との関連が少ないこともこの研究で明らかになりました。

大脳皮質とは、前頭葉や頭頂葉、側頭葉、後頭葉といった大脳の表面にある脳領域のことです。

まとめ

今回、脳卒中患者様の脳画像結果と痙縮の有無から、痙縮発症の可能性が高い重要な基準は…

『運動を司る脳領域に発生した場合』と、その際における『病巣の体積』です。

この辺りを抑えておくことができれば、今後の痙縮の状態を完璧とまでは言わないまでも、ある程度予測することが可能かもしれないので、ぜひ参考にして頂けたら幸いです。

参考文献

・Early brain imaging predictors of post-stroke spasticity.Ri S,2021

 

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