この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 ぜひ、明日からの臨床にお役立てください。
今回は、『拘縮にストレッチの効果はあるのか?』というテーマに沿ってお伝えいたします。
拘縮の原因は、神経疾患および非神経疾患においても生じるうる合併症の一つといわれています。また、その特徴としては関節可動域の低下を招くことが多いとされています。
このような関節可動域の低下に対してよく現場で実施される介入の一つが『ストレッチ』であり、この方法は拘縮の治療と予防に広く使用されています。
しかし、実際このストレッチという介入のみで拘縮が改善できるかというのは、あまり議論されておらず現場によっては“なんとなく”拘縮にはストレッチといった意思決定がされているという話しも耳にします。
そこで、これらを踏まえて今回ご紹介する研究では「ストレッチの効果が拘縮にどのような効果を発揮しているのか?」この点について検証していきます。
この記事を通して、日々当たり前に用いている手段が病態に対して適しているのか、それを考えるきっかけになって頂けたら幸いです。
【拘縮とストレッチの関係】効果の真相を徹底解説!
本日ご紹介する論文
はじめに、今回ご紹介する論文はこちらです。
Stretch for the treatment and prevention of contractures.Harvey L,2017
研究の目的
本研究の目的は、拘縮のある方、または拘縮を発生するリスクのある人に対してストレッチの効果を検証することです。
研究方法
本研究は、システマティック・レビューとなっています。
ストレッチの効果を決定するために用いられたアウトカムは、以下となっています。
- 関節可動域
- 生活の質
- 痛み
- 活動制限
- 参加制限および有害事象
上記の5つの項目に沿って、短期(最後のストレッチから最大 1 週間後)および長期(1 週間以上)でストレッチの効果を検証していきました。
結果
結論として、神経疾患の有無に関わらずストレッチのみで長期的な拘縮の改善(特に関節可動域)には結びつかないということが証明されました。
ただ、「全く効果がない」というわけではなく…
ここで明らかになったのは、「即時に可動域は増加するが、長時間持続しない」ということです。
つまり、即時的に拘縮の改善を図るという点だけ見ると使い道はありそうだということがわかります。
臨床的解釈
以上の結果から臨床において、神経疾患の有無に関わらず長期的に拘縮の改善・予防にストレッチだけ行うのは効果的ではないと言えます。
関節可動域の改善に対しては、ストレッチ単独では持続的な効果を保つことができないため、重要なのは「ストレッチに+αで自動介助運動や自動運動、もしくは物理療法を併用する」といった介入を行うことで長期的に拘縮が改善するためには好ましいのではないかと思います。
リハビリがストレッチだけで終わらないよう、目的をきちんと持って行うようにすると臨床ではより活用できるのではないかと思います。
参考までに少しでも、ご検討いただけると幸いです。
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参考文献
Stretch for treatment and prevention of contractures.Harvey L,2017