慢性脳卒中の歩行パラメータとバランスに対する後方歩行観察トレーニングの効果

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 ぜひ、明日からの臨床にお役立てください。

急性期や慢性期問わず、脳卒中を患っている方にとって重要な問題の一つが『転倒』です。

では、なぜ脳卒中を発症すると転倒というリスクが付きまとうのか。

それは、『バランス能力の低下』という状態が見受けられるからです。そのため、脳卒中後においてはバランス能力の向上に伴った転倒リスクの改善ということを視野に入れリハビリテーションプログラムを組んでいく必要があります。

そこで今回は過去の先行研究で示唆された、後ろ歩きの動作観察トレーニングが『転倒リスクの改善』につながる可能性があることから、本記事では歩行パラメーターと後ろ歩きの動作観察トレーニングの関係性について検証したいと思います。

※歩行パラメータとは、歩行速度・ケイデンス・歩幅によって決定される変数のこと。

慢性脳卒中の歩行パラメータとバランスに対する後方歩行観察トレーニングの効果

本日ご紹介する論文

今回、ご紹介する論文はこちらです。

The effect of backward walking observational training on gait parameters and balance in chronic stroke: randomized controlled study.Moon Y,2022

研究の目的

慢性期脳卒中患者様において、歩行パラメータと後ろ歩きの観察トレーニングの効果が歩行改善に効果的なのかを検証することです。

対象者

  • 24人の慢性期脳卒中患者

組み入れ基準

  • 脳卒中発症から6〜12ヶ月以上経過していること
  • 歩行補助具の有無にかかわらず、10 m 以上自立歩行が可能
  • 視覚障害および聴覚障害がない方
  • その他の医学的合併症がない方

除外基準

  • 後ろ歩きが困難な方
  • 既存の神経障害を有する
  • 半側空間無視を有する
  • 進行性疾患を有する
  • MMSEが24点未満の方

研究方法

無作為に後ろ歩きの動作トレーニング群および景観観察トレーニング群に割り当てられました。

被験者24名は、体幹のエクササイズ、下肢の強化エクササイズ、姿勢制御および重心移動練習を各セッション30分週5回計20セッション4週間実施しました。

その後、各トレーニング群に分かれて実施しました。

動作観察トレーニング群

10 分間、騒がしい部屋で様々な方向に後ろ向きで歩くビデオを見ました。

景観観察トレーニング群

10 分間、風景画だけで構成された風景写真ビデオを見ました。

各グループともにビデオ視聴後、休息を2分間挟み、20分間後ろ歩きを実施しました。

アウトカム

歩行

  • 10m歩行(歩行速度)
  • 歩幅
  • ケイデンス

静的バランス

  • 5回立ち上がりテスト(5Tsts)
  • 圧力の中心速度 •圧力の中心の長さ
  • 患側の体重分布

動的バランス

  • 活動固有のバランスの信頼性(Abc) スコア

※ABCスコアとは、バランスに関する転倒不安・恐怖感を見るテストであり、屋内外における16の活動項目からなる。

 0〜100%で問う自己効力感尺度で自信の度合いの平均値をABCスコアとする尺度である。

結果

どちらのグループも介入前後でそれぞれのアウトカムにおいて、改善は認められましたが、後ろ歩きの動作観察トレーニング群の方が有意に改善を認めました。

※今回は、5Tstsと活動固有のバランスの信頼性(Abc) スコアのみ記載させていただきます。

  • 5Tsts(秒)
 介入前介入後(4週間後)
動作観察トレーニング群24.4122.65
景観観察トレーニング群26.7425.87
  • 活動固有のバランスの信頼性(Abc) スコア
 介入前介入後(4週間)
動作観察トレーニング群651.67818.33
景観観察トレーニング群637.50714.17

臨床的解釈

今回の結果から見て臨床に活かせることとして、後ろ歩きは、慢性脳卒中患者様においても静的・動的バランスの改善に有効と考えられます。

ただ、今回の研究のように様々なトレーニングを組み合わせた上で、ただ後ろ歩きを実施するわけではなく、後ろ歩きの動画を見て

運動イメージの解像度を高めることも重要でないかと考えます。

環境的に動画を見ることは難しくても、まずは、後ろ歩きを患者様ではなくセラピストが実施してからよりイメージしやすい環境作りを行うことも必要かと思います。

参考までに、ご検討いただけると幸いです。

脳と脊髄リハビリ研究センター福岡によるセミナーのご案内

※理学療法士&作業療法士さん向けの内容です

脳と脊髄リハビリ研究センター福岡では、当施設を利用して毎月セミナーを開催しております。

一回のセミナーの参加人数が8名限定と少数で開催しているため質疑応答等も行いやすく、終了後モヤモヤが残ったままにならないように徹底したディスカッションを中心に行っております。

セミナーのテーマは3つに絞っております。

  1. 『脳卒中リハビリテーション』
  2. 『ペインリハビリテーション』
  3. 『クリニカルリーズニング』

この3本を月毎に開催しております。

詳しい内容や日時については、こちらのページをご覧ください。

関連記事

 当センターでは、療法士の皆様向けに2つのカテゴリーにわけて育成型のセミナーを実施しております。Pain rehabilitation近年、脳-神経系の関与や情動・心理といった部分に対する介入の必要性が問[…]

皆様の明日の臨床を確実に変えられるような、そんなセミナーとなっております。

ぜひ、ご参加お待ちしております!

参考文献

The effect of backward walking observational training on gait parameters and balance in chronic stroke: randomized controlled study.

最新情報をチェックしよう!