この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
今回の記事は、脳卒中リハビリにおける歩行についてです。
「歩行自立になるためにはどのくらいの速さで歩く必要があるのか?」このテーマに沿ってお話しします。
さて療法士の皆さんは、当事者の方にきちんと説明を行った上で歩行自立を目指せていますか?
ここは臨床に携わっていると、悩むポイントの一つではないでしょうか?
そこで今回の記事ではセラピストの皆さんに、このテーマに関して根拠に基づいて説明できるようになっていただくことを目的に解説していきたいと思います。
ぜひ、最後までご覧ください。
【脳卒中リハビリ】歩行自立になるために必要な速さとは!?
はじめに
今回ご紹介する論文はこちらです。
対象者
慢性期脳卒中患者54名
組み入れ基準
- 発症から6ヶ月以上経過している
- 歩行が介助なしで実施可能な方
除外基準
- 指示の理解が困難な方
- 重篤な心疾患または呼吸器疾患を有する方
- 脳卒中以外の神経疾患
- 整形外科疾患による歩行障害を有する方
研究方法
移動能力、歩行機能、身体活動にわけてそれぞれ評価した。
移動能力
レベル0(歩行不可)からレベル5(正常歩行)の6段階に分類した。
- レベル0:外出支援があっても歩行ができない(歩行不可)
- レベル1:歩行に解除が必要もしくは、リハビリ時のみ歩行が可能(機能的歩行不可)
- レベル2:自宅のように慣れている環境で歩行が可能(家庭内歩行可能)
- レベル3:歩行距離に制限はあるが、屋内外の歩行が可能(近隣への歩行可能)
- レベル4:歩行距離に制限がなく、買い物や他の雑用を遂行することは可能であるが歩容に異常がある(自立した地域内歩行)
- レベル5:屋内外での歩行距離に制限なく、歩容も正常である(正常歩行)
歩行機能
対象者が日常的に使用されている装具や杖を用いて実施した。
移動能力・身体活動のレベルと点数を参考にして、①屋内歩行②近隣歩行③地域内歩行の3グループにわけて下記項目を実施した。
- 快適・最大歩行速度
10m歩行テストを行い、快適・最大速度それぞれ2回ずつ測定し、解析には2回目を用いた。
- 6分間歩行
American Thoracic Society Statementによるガイドラインに準じて、歩行距離は30mの直線路として、3mを最小単位として測定した。
身体活動
日本語版 Life–Space Assessmentを用いた。算出方法は過去4週間の生活空間を1〜5点に分類して行った。
- 1点:住居内
- 2点:居住空間の近くの空間
- 3点:自宅近隣
- 4点:町内
- 5点:町外
各生活空間の得点に加え、活動頻度・自立度の点数を足して算出する。
120点満点で、点数が高いほど身体活動が多く、自立して活動できていることを意味している。
アウトカム
移動能力
- Functional Ambulation Classification of the Hospital at Sagunto (FACHS)
歩行機能
- 快適歩行速度(CWS)
- 最大歩行速度(MWS)
- 6分間歩行(6MWD)
身体活動
- Life−Space Assessment(LSA)
慢性期脳卒中者の地域における移動能力と歩行機能および身体活動の関係を、CWS・MWS・6MWDを用いてROC曲線を使用し解析を行った。
結果
移動能力・歩行機能・身体活動の全てに相関関係が見られました。
要するに、移動能力のレベルと身体活動の点数が高ければ高いほど、歩行スピードが早く歩行距離も延びる傾向にあります。
そしてより詳細な結果に関しては、歩行の部分のみ抜粋して表記します。
屋内歩行グループ | 近隣歩行グループ | 地域内歩行グループ | |
快適歩行速度(m/s) | 0.47 | 0.55 | 0.83 |
最大歩行速度(m/s) | 0.56 | 0.69 | 1.03 |
6分間歩行(m) | 155 | 184 | 287 |
地域内歩行における判別する歩行機能のROC曲線は以下の通りです。

本研究でのカットオフ値は、快適歩行速度(CWS) 0.61(m/s)、最大歩行速度(MWS) 0.71(m/s),6分間歩行(6MWD) 213 mでした。
臨床的解釈
今回の研究から示唆されること…
結論として、歩行自立するために最低でも速度は0.61(m/s)以上、距離は213m以上連続で歩けることが必要になってくるということです。
ただし、留意点もあります。
この研究ではあくまでもスピードと距離の話であり、歩容の状態は省いています。
すなわちどのような歩き方をしていても、例えば杖や装具を使用していても構わないことを示しています。
とはいえ、「歩行の自立」は特に回復期等であれば非常に重要な論点になってくるため目安として知っておくのは大切だと思います。
当事者の方の歩行速度を知るためには、きちんとリハビリの時に評価をして10m歩行や6分間歩行を測定する必要があります。
また、トレッドミルを用いて知ることもできます。
今回の研究の結果から考えると速度が0.61(m/s)以上で、自立可能レベルになると言えます。
距離に関しては、時間×速さで求められるため今回の研究結果の歩行速度で、例えば5分間歩き続けるとすると…
1分間は60秒なので、60(秒)×5(分)=300(秒)
0.6(m/s)×300(秒)=180m
したがって、0.6(m/s)の速さで5分間歩き続けると180m歩けたということになります。
ぜひ1つの指標として、明日からの臨床に活かしていただけると嬉しいです。
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