【脳卒中リハビリ】上肢固有感覚障害における評価10選

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患(脳梗塞・脳出血・脊髄損傷など)により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

さて、本日は日々脳卒中のリハビリテーションに従事する療法士の皆さん向けに、『脳卒中後における固有感覚障害の評価方法一覧』というテーマでお伝えしていきたいと思います。

現場で、筋緊張や筋力、歩行やバランスといった評価はある程度知られているものの、『固有感覚』の評価というのは案外知らない方が多いのではないかと思います。

そこで、今回は(網羅できているかは分かりませんが)海外で扱われているものを中心に固有感覚障害の評価方法をご紹介していきたいと思います。

よろしければ参考にしていただき、明日からの臨床に活かして頂けますと幸いです。

【脳卒中リハビリ】上肢固有感覚障害における評価10選

今回、固有感覚障害の評価一覧をまとめるにあたって、参考にさせて頂いた論文はこちらです。

Multisensory Integration in Stroke Patients: A Theoretical Approach to Reinterpret Upper-Limb Proprioceptive Deficits and Visual Compensation. Bernard-Espina J,2021

1.Thumb Localization Test(TLT)

TLTは、被験者が身体の一部(親指)を認識する能力を評価する方法です。

療法士は患者様の麻痺側上肢を手に取ります。その時、可能であれば患者様は親指を立てておき非麻痺側の手で立てた親指を握ります。

この時、視覚は遮断した状態でなければならないため、目隠しもしくは閉眼状態で行う必要があります。

また、以下の図で示すように療法士は手に取っている患者様の腕を色んな位置に動かしていき、都度評価を行います。

TLTの様子

Reliability of the thumb localizing test and its validity against quantitative measures with a robotic device in patients with hemiparetic stroke.otaka,2020より引用

TLTに関する知見

221名(423肢)の所見から、脳病変の対側または末梢神経病変の同側の肢を固定肢とした場合にTLTの障害がみられたが、固定肢を到達肢とした場合にはみられなかったこと、TLTによってみられた肢位定位障害は、関節の位置や運動などの深部知覚や識別感覚の障害と強く相関しており痛みや温度などの感覚障害とは相関しなかった。

2.Up or Down Test (UDT)

UDTは和訳版でいうなら、運動覚のテストに非常に類似しています。

つまるところ、被験者の関節変位方向検出能力を評価するテストですね。療法士が閉眼の患者様の関節を動かし、被験者は上下の移動方向を答えます。

3.Mirror Position Test (MPT)

MPTは和訳版でいうなら、位置覚のテストに非常に類似しています。

被験者が特定の関節角度を知覚する能力を評価するテストであり、方法としては療法士が患者様の上肢を把持し上肢を他動的に動かします。

患者様は、その動かされた上肢の位置(関節の角度)を非麻痺側で模倣することで、深部感覚障害の程度を評価します。

4.Bimanual Sagittal Matching Test (BSMT)

矢状面に沿ってロボット装置により受動的に駆動される麻痺側上肢の軌跡/位置を、非麻痺側の上肢で再現します。

これにより、麻痺側上肢の固有感覚を評価することが可能となります。

5.Within-arm Position Test (WPT)

麻痺側上肢における関節角度を知覚する能力を評価するもので、ロボットが被験者の麻痺側上肢を記憶させる位置まで動かし、その後初期配置に戻します。

その後、再び被験者に麻痺側上肢を記憶した位置まで動かしてもらうことで、麻痺側上肢の固有感覚を評価することができます。

6.Matching to a Visual Image (MV)

被験者には、仮想の手などを用いて様々な方向を示す視覚的なイメージを提示します。

その後、被験者に視覚的なフィードバックなしに、同じ向きを手で再現するように指示することで、運動イメージに基づく手の固有感覚を評価することができます。

このとき手を覆う箱やバーチャルリアリティのヘッドセットを装着することで、手の視覚情報を遮断することが可能です。

7.Threshold Detection Test (TDT)

様々な大きさの手の変位を検出する能力を評価するテストです。

ロボット装置を用いて、まず関節(肘、手首、中手指節)を開始位置から指定された位置まで動かします。

次に、ロボットによって開始位置から同じ方向で、同じ振幅ではない2回目の動きが操作され、このとき被験者に2回目の動作が1回目の動作より大きいか小さいかを答えてもらうことで運動感覚を評価することができます。

8.Finger Proprioception Test (FPT)

人差し指と中指の位置が合っているかどうか(屈曲/伸展)を検出する能力を評価するテストです。

ロボット装置により、2本の指を受動的に交差屈曲/伸展運動させ、指を交差させる動作のたびに、被験者は2本の指が相対的に直接整列している瞬間を口頭で答えてもらいます。

これにより、手指の位置感覚を評価することができます。

9.Reaching Test (RT)

視覚的な参照に対して、被験者がみていない上肢を空間に定位する能力を評価します。

視覚的なターゲット(現実または画面上)を示し、被験者は到達する手の視覚的なフィードバックなしに、記憶したターゲットに手を伸ばすよう求められます。

10.Shape or Length Discrimination (SLD)

閉眼の状態で、物体の形状や寸法を識別する能力を評価するテストです。

視覚情報が得られない被験者に、見慣れた幾何学的形状、日常的な物体、長さの異なる線分などのさまざまな物体が提示されます。

受動的な動き(ロボット装置や理学療法士による操作)または能動的な動きで被験者はさまざまな物体を操作し、知覚した形状、物体、または長さを答えます。

この評価は、触覚情報も含めた感覚情報全般を評価するテストになっています。

上肢固有感覚障害の評価まとめ

さて、以上が脳卒中における上肢固有感覚障害の評価になります。

今回は、詳細な方法論というよりも「こういうものがあるよ」という紹介のみになっておりますので、実際の詳しい評価方法や採点基準などを知りたい方は原著論文等をご覧頂けたらと思います。

それでは、本日も臨床頑張っていきましょう!

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