この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
脳卒中後における視覚代償のホント
脳卒中患者様の中には、体性感覚障害を患っている方が多くいますが、そのうち一部の患者様では『視覚』でこれを代償しているように見えることがあります。(目を瞑ったら行為の推敲ができないが見ていれば出来たり…などの現象から)
しかし、実際のところ「本当に視覚で代償できているの?」というのは今ひとつ疑問であり。臨床現場においては検証も難しいところです。
そこで、今回ご紹介したいのがこれを実際に検証した研究です。
内容をざっくりお話しすると…
①脳卒中患者様が視覚を使って体性感覚障害をどの程度補うことができるか?
②体性感覚障害を視覚で補うことが、パフォーマンスの向上にどの程度関連するか?
大きくこの2つのテーマを解決するために行われた研究です。
今回は、この研究から得られた結果をシェアしていきたいと思います。
結果① 体性感覚障害を視覚で代償出来ていない
まず、①のテーマである…
脳卒中患者様が視覚を使って体性感覚障害をどの程度補うことができるか?
についてですが結論、脳卒中後の患者様が体性感覚障害を視覚で代償“出来ている”ケースはかなり少ないことがわかりました。(数名は代償可能であったが)
「なぜ、体性感覚障害を持つ脳卒中患者様では資格を用いた代償がうまく行えないのか?」 ということなのですが、この論文の考察で述べられている内容が以下のことです。
脳卒中後遺症患者様が体性感覚障害を視覚で代償出来ないその理由としては、後頭頂葉で行われる視覚と体性感覚の統合に何らかの問題が生じていることで、視覚代償が行えない可能性がある。
と論じています。
結果② 視覚代償によってパフォーマンスは向上しない
解明したい2つ目のテーマ。それが…
体性感覚障害を視覚で補うことが、パフォーマンスの向上にどの程度関連するか?
ということなんですが、結論…
「仮に視覚で代償を行えたケースでもパフォーマンスが向上するわけではない」という、従来唱えられてきた視覚代償のメリットを覆す結果となりました。
この知見から得る考察〜交絡因子の可能性〜
以上の結果を踏まえた上で、この知見をどのように臨床現場で活かしていくか。
ということなのですが、この知見を紐解いた上でまず確実に抑えておきたいこと。
それは、これまでなんとなく視覚代償によって向上していたと思われていたものは意外と何か他の要因によって左右されている(交絡因子)可能性があるということです。
つまり、なんとなくセラピスト側からは視覚代償によってパフォーマンス等が向上していたように見えていたかもしれないが、もしかするとそれ以外の要因でそれらが達成されていた可能性があるということです。
しかし日々リハビリサービスを提供している私自身、体性感覚障害のある患者様が一見視覚で代償しているような光景をこれまで何度も見てきたので、正直ほとんどの患者様が視覚代償を行っていると思っていました。
しかし、どうやら全てのケースでこれが当てはまるわけじゃないようです。 (一見視覚代償をしているように見えても)
だとすると次に考えるべきは…
・他に何が影響しているのか?
ということではないかと思います。
パフォーマンスの向上が視覚代償によるものでないとするならば、何が一体そこに寄与しているのか。
この辺りをもっと深く調べていく必要がありそうです。
参考文献
・Vision does not always help stroke survivors compensate for impaired limb position sense.Herter TM,2019