この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
皆様は日常生活でこのように感じることはありませんか?
この症状は膝の過伸展と呼ばれ、脳卒中後のリハビリにおいて多くみられる症状のひとつです。
膝の過伸展は歩行のリズムを崩し、転倒のリスクや関節への負担の増加など様々な影響を及ぼす為、この膝の過伸展をどう改善するのかが大きな課題になっています。
そこで今回は最新の研究をもとに、膝の過伸展がどのタイミングで発生し、何が原因なのかを4つのパターンに分けて解説し、それぞれの原因に応じたリハビリ方法を提示したいと思います。
このコラムを通して、膝の過伸展のパターンを理解し、適切なリハビリに役立てていただけたら幸いです。
【脳卒中リハビリ】膝の過伸展(反張膝)の4つのパターンと原因について~最新の研究をもとに~
はじめに
今回の論文は2024年9月に「Gait&Posture」誌に発表された論文です。
Categorizing knee hyperextension patterns in hemiparetic gait and examining associated impairments in patients with chronic stroke,kohsuke-okada他,2024
対象者
以下の基準に該当する30名(2019年5月から2020年3月にかけて慶應義塾大学病院に入院されていた患者様)
- 脳卒中発症後から6か月以上経過
- 10m歩行可能(装具なし・歩行補助具なし)
- 歩行時に膝の過伸展が出現する
方法
裸足で10mを歩行し、その際の膝の動きを詳細に観察
- 8台のカメラを使用した3次元モーションキャプチャシステムを用いて、膝がどのタイミングで過伸展するのかを記録
- 膝の筋力や体幹の安定性、足首の柔軟性(ふくらはぎの痙縮の程度)を以下の方法を用いて評価
1)徒手筋力テスト(MMT):膝屈筋と膝伸筋の筋力
2)Fugel-Meyerアセスメント(FMA-LE):下肢の運動機能
3)体幹インパイアメントスケール(TIS):体幹の安定性
4)修正アシュワーススケール(MAS):ふくらはぎの痙縮
結果とリハビリへの応用
研究の結果、膝の過伸展が生じる主な原因として、ふくらはぎの痙縮や体幹の筋力低下、膝屈筋群の筋力低下が影響してることが示唆されました。
そして、膝の過伸展がどのタイミングで発生するかに基づき、以下の4つのパターンに分類されました。
【瞬間型(Momentary)】
原因とタイミング:ふくらはぎの筋肉の痙縮により、麻痺側の足が地面についた瞬間、一瞬だけ膝が伸びる。
リハビリ:足首の柔軟性を高め、膝で体重を支えるトレーニングを実施
【早期・中期立脚期型(ESS-LSS)】
原因とタイミング:ふくらはぎの筋肉の痙縮と膝屈筋群の弱さにより、麻痺側の足に体重を乗せ始めたときに膝が伸びる。
リハビリ:ふくらはぎの柔軟性改善と膝屈筋群の強化
【早期片脚立脚期から二重支持期までの型(ESS-DS2)】
原因とタイミング:体幹の安定性低下と膝屈筋群の弱さにより、麻痺側の足が地面に接地してから、次の1歩を踏み出すまで膝が伸びている。(足を蹴り出すときに多少膝が曲がることがある)
リハビリ:膝で体重を支えることを目的とした体幹トレーニングとバランス練習
【持続型(Continuous)】
原因とタイミング:体幹と膝屈筋群の筋力低下により、麻痺側の足が地面についた瞬間から次の足を踏み出すまでずっと膝が伸びている。(いわゆる分回し歩行)
リハビリ:膝を曲げて支えることを目的とした膝屈筋群と体幹の強化
おわりに
今回の研究では、膝の過伸展はタイミングによって原因が異なることが示唆されました。
まずは歩行中のどのタイミングで過伸展が起こっているのかを確認し、適切なリハビリを取り入れることで膝の過伸展が改善されリズムよく歩行することが可能になると思います。
歩行の質が向上し、転倒リスクや関節の負担が軽減することで日常生活もより快適に過ごせますので、日々のリハビリの参考になれば幸いです。
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