【脊髄損傷リハビリ】5回立ち上がりテストと膝伸展筋力の関係性は?

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。 ぜひ、明日からの臨床にお役立てください。

脊髄損傷患者様におけるリハビリテーションを行っていく中で使われる評価の1つに『5回立ち上がりテスト』というのがあります。

これは、下肢の筋力の状態をチェックする目的で椅子やベッドから5回立ち上がりを行う評価バッテリーの一つです。

とはいえ、ここでいう『下肢の筋力』といっても具体的にどこの筋力との相関が強いのか、その点いついてはまだまだ不透明な部分が多いです。

そこで今回の記事では、過去に5回立ち上がりテストと膝関節の伸展筋力の関係性を調べた研究があるので、この論文を参考に両者がどのような関係性があるのかを解説していきたいと思います。

【脊髄損傷リハビリ】5回立ち上がりテストと膝伸展筋力の関係性は?

本日ご紹介する論文

Knee Extensor Muscle Strength to Measure the Ability of Five Times Sit to Stand Independently in Patients with Incomplete Spinal Cord  Injury.Mato L,2022

研究の目的

脊髄損傷患者様の日常生活の動作能力を測るための「5回立ち上がりテスト」というテストがあります。

このテストの結果を解釈する際には、膝関節伸展筋力の強さがどの程度あるかがポイントになります。

この研究は膝関節伸筋筋力がどの程度あるのか、また、この筋力の結果が5回立ちテストに対してどのような解釈をもたらすのか、その基準を定めることを目的としました。

対象者

  • 慢性期の脊髄損傷患者様(脊髄損傷後12ヶ月以上経過している者)
  • 年齢が18歳以上
  • 体格指数(BMI)が18.5 kg/㎡から29.9 kg/㎡の範囲内であること
  • 自立している状態で、椅子から5回転立ち上がる能力があること(手を使っても、使わなくても可)

研究方法

手持ち式ダイナモメーター(HHD)を使用した膝伸展筋力テストと、5回立ち上がりテスト(FTSST)を使用して、膝伸展筋力を測定しました。

  • 膝伸展筋力テスト

テストを行う前に、下肢の筋肉の状態を整えるためにリラクゼーション、関節可動域訓練を実施しました。参加者は、背臥位で膝屈曲90度から膝を伸展して測定しました。

  • 5回立ち上がりテスト(FTSST)

手を使用するグループと使用しないグループの2つに分けて行い、手を使用するグループは、平行棒を持って行いました。

2グループともに、座位の環境は肘掛のない椅子に座り実施しました。
テストは1人3回ずつ実施、約5分休息時間を用いていました。

アウトカム

  • HHDを用いての膝伸展筋力テスト
  • 5回立ち上がりテスト(FTSST)

結果

膝伸展筋力、5回立ち上がりテスト(FTSST)の結果から、手を使用していないグループの方が筋力を使っており、なおかつ立ち上がりに時間を要しないことが分かりました。

表1は、筋力と実際にかかった時間を表記したものです。膝伸展筋力は、値が大きいほど筋力も強いです。5回立ち上がりテスト(FTSST)は値が少ないほど、時間を要していないことが分かります。

表2は、5回立ち上がりテストにおいて手を使用した場合と、使用していない場合の膝伸展筋力との相関関係を表したものです。

相関関係とは…二つの値やテストには関連性がある関係であるかを確かめること
  • 表1
変数手を使用したグループ ( n = 22)手を使用しないグループ ( n = 22)

P

膝伸展筋力(N)48.27 (13.22) (42.41、54.13)60.75 (16.47) (53.45、68.06)0.006
FTSST(N)14.52 (2.82) (13.27、15.77)12.36 (3.24) (10.92、13.80)0.023
  • 表2
変数膝伸展筋力P値
FTSST(手使用)0.110.636
FTSST(手なし)–0.450.035

臨床的解釈

今回の研究から、結論として上記の結果でも見られる通り膝伸展筋力と5回立ち上がりテストは関連性があると言えます。

では、この知見をリハビリテーションの現場でどのように活かすのか…?

それは、まず手を使用しない状態で5回立ち上がりテストを行ってみて、できない場合は一つの要因として膝伸展筋力が低下しているのではないか?という予測を立てることができると思います。

もちろん、立ち上がりが行えない要因は膝関節の伸展筋力だけで完結するものではなく、あくまでも1つの要素でしかありません。

しかし、この評価の実施後少なくとも次の打ち手として「筋力トレーニングを実施すべき筋肉をある程度絞ることができる」というのは、リハビリテーションを進めていく上で大きな手助けになるのではないでしょうか?

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参考文献

Knee Extensor Muscle Strength to Measure the Ability of Five Times Sit to Stand Independently in Patients with Incomplete Spinal Cord Injury.Mato L,2022

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