この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
本日は、日々リハビリテーションの仕事に従事している理学療法士さんや作業療法士さん向けの内容となっております。
テーマは、『リハビリテーションを進めていく際の難易度設定』についてです。
課題の難易度設定は、脳卒中後をはじめリハビリテーションを行っていく上で非常に重要な要素となるため、「いまいち難易度設定が難しい…」とお悩みを持たれているセラピストのみなさんはぜひ最後までご覧ください。
【療法士向け】リハビリテーションを進める際の課題の難易度設定を解説
難易度設定のポイントは『運動イメージ』
結論から申しますと、課題の難易度設定を行う際にキーワードになるのは、『運動イメージ』であると考えています。
「なぜ運動イメージがポイントになるのか?」
その理由をご説明します。
まず、臨床において課題の難易度設定を行う目的というのは、“対象者が最も運動学習を行いやすい状態をつくるため”という前提を置いた場合、「そもそも運動学習ってどんなプロセスなんだっけ?」ということを先に押さえておく必要があると思ってます。
運動学習のモデルは、基本的に3つの要素から成り立っていると考えており、それが以下3点です。
②『運動が行えるか』
③『運動イメージ通りの運動とそれに伴う感覚が返ってきたか』
この3つのうちどこかの要素にエラーが生じると、誤差情報としてそれが運動学習に利用でき、繰り返し課題を行うことによってそのエラーを修正していくという手続きを踏みます。
そして、この3要素の中で最も大切なのが①の『運動イメージ』です。
なぜならば、運動イメージというのは実際の運動に先行して生じる予測情報であるため、ここでエラーが生じると実際に生じる運動にも高確率でエラーが起きるからです。
そのため、患者様のパフォーマンスを見ていく際は「運動イメージがどれくらい出来ているだろうか?」というのは必ず評価する必要があると考えています。
運動イメージをどのように難易度設定に利用するのか?
次は、「課題の難易度設定において、具体的に運動イメージをどのように利用するのか?」ということについてご説明します。
難易度設定を行う時のポイントは、患者様が“これからやろうとする運動がイメージできるか”がとても重要です。
つまり、課題の設定として患者様がイメージできない運動は採用しません。
なぜならば、その運動は現時点に置いて難易度が高すぎるからです。
運動イメージができない運動というのは、「予測が立たない」状態と同義であると考えると、患者様にとっては実際に運動を行っても何が正解なのかが分からないのです。
運動学習は、予測と実際の運動の比較照合の繰り返しで成り立っているわけですが、ここでいう比較照合は『予測』をある種の正解と置き、『実際の運動』はその予測とどれだけ乖離があるかを測るものとなります。
そのため、運動のイメージができない(予測ができない)ということは実際の運動と比較照合する正解が存在しない状態になるので、運動学習のモデルとして機能しない可能性が高いと考えています。
逆に、イメージはできるが運動そのものがうまくいかない場合、これは採用します。
なぜなら、イメージさえできれば比較できるものは少なくとも備わっているので、あとは実際の運動をイメージに近くなるよう訓練を繰り返し行っていけば良いです。
ただしこの時の注意点としては、いくら運動イメージが行えると言っても、10回トライして1回もクリアできないような運動は採用しません。
それは、このように本人にとって難しすぎる運動を繰り返し行なっても失敗ばかりではモチベーションが担保できないからです。
回数で考える難易度設定
では、最後に一旦ここまで話した内容を実際の手順としてまとめてみます。
回数などについては、根拠は特になく私が臨床を行うときの目安にしているものです。
①対象者の方に、これから行おうとする運動とその運動を行なった後にどのような感覚が返ってきそうかイメージしてもらう。
②イメージできれば採用/イメージできなければ不採用
③イメージできた場合
→10回トライして1回もクリアできない場合、運動の難易度を下げる。
→10回トライして6~10クリアできた場合、運動の難易度をあげる。
→10回トライしてみて2~5回クリアできれば、その課題が現時点における最適解だと判断する。
このような流れで課題の難易度設定を行っております。
もしこの記事を読んで「これ、いいかも!」と思って頂ければ、ぜひ明日の臨床に活かしていただけますと幸いです。
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