【脳卒中の再発防止】採血の検査のLDL(悪玉コレステロール)は低ければ低いほどいい?

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。

脳卒中は「再発しやすい病気」です

脳卒中を発症してすぐは「もう絶対に二度と同じような経験をしたくない」と思うものです。
そして、脳卒中のリハビリに長年携わってきた身から言えることとして、脳卒中にはなってから色々と対策を講じるのでなく「予防が一番」です。

一般的に脳卒中のリスクを上げる要因としては喫煙、飲酒、偏った食事、運動不足、お薬の自己判断での中断などが挙げられます。

疫学調査で非常に有名な福岡県の久山町で行われた大規模な研究による脳卒中の再発リスクは

  • 発症から1年以内:12.8%
  • 発症から5年以内:35.3%
  • 発症から10年以内:51.3%

となっており、10年間で実に2人に1人が脳卒中を再発している計算となるため、かなり高確率で再発しやすい病気であることが分かります。

採血の結果でみるべきポイントの1つである「LDL(悪玉コレステロール)」

先にお伝えしたように、脳卒中を発症する要因には喫煙や飲酒、食生活や運動習慣などの生活習慣が関与します。

発症予防、再発の防止の観点から定期的に採血をして血液の検査結果を見ることもあるかと思いますが、そこに大体記載している「LDL」という項目について今回はお話します。

LDLとは、「Low Density Lipoprotein」の略語で、直訳すると「低比重リポタンパク質」を指します。
よく知られている名前では「悪玉コレステロール」です (「悪玉」とついている時点でいかにも悪そうなことをしそうな検査項目ですよね)。

いかにも悪そうなLDLコレステロールですが、「肝臓から全身へとコレステロールを運ぶ」という役割があり、このコレステロールは「血管の壁を作る」という大切な役割があります。しかし、あまり多すぎると「血管の中にコブ(プラーク)」を作り血管を詰まらせ脳梗塞などの原因となりやすくなります。

多すぎるとダメと言われても、具体的にどのくらいの数値になると理想的なのか…
今回紹介するのはまさにこのLDLの値の理想的な数値と、LDLを下げることで脳卒中の発症のリスクがどれだけ低下するかを調べた研究です。

Efficacy and Safety of Very Low Achieved LDL Cholesterol in Patients With Previous Ischemic Stroke(2025)

①研究の結論

この研究の結論は以下の通り

脳梗塞の既往がある患者では、LDLを40 mg/dL未満まで下げることで再発を含む心血管疾患の発症イベントが有意に低下

LDLコレステロールは低ければ低いほどリスクが下がるという「単調減少」の関係が確認された

心配されていた出血性脳卒中のリスク増加は認められなかった

②研究の方法

本研究では、過去に行われたLDLコレステロールを下げる薬剤の効果を調べた試験の中で脳梗塞になった方を抽出して分析しています。

データ元

  • FOURIER試験
    動脈硬化性の心血管疾患の既往があり、LDLコレステロールを下げる効果のあるスタチンという薬剤を投与していてもLDLコレステロールの値が70mg/dl以上となっている患者に対して、LDLを強力に低下させるエボロクマブという薬剤を追加した場合の効果と安全性をみた試験。エボロクマブを実施した群と、プラセボ(偽薬)を投与した群を無作為に分けて効果を判定。
  • FOURIER-OLE試験
    FOURIER試験からさらに約5~8年にわたる追加試験で、親試験であるFOURIER試験でプラセボ群となった症例に対してもエボロクマブを投与してLDLの値を確認。

研究の対象

FOURIER試験、FOURIER-OLE試験の中で「虚血性脳卒中(脳梗塞)の既往がある患者」5291人を対象

※除外対象:4週間以内に虚血性脳卒中を発症した患者、過去のいずれかの時点で出血性脳卒中を患った患者

解析方法

エボロクマブ投与の結果、達成したLDLの値を以下の複数のカテゴリーに分類

  • 20 mg/dL未満(666人)

  • 20 ~ 40 mg/dL未満(1,410人)

  • 40 ~ 55 mg/dL未満(586人)

  • 55 ~ 70 mg/dL未満(508人)

  • 70 mg/dL以上(2,121人)

これらのデータをポアソンの回帰モデルと共変量の調整によって個人で違う追跡期間や年齢、BMI、人種、既往歴などの共変量を調整し、バラつきを極限まで抑えた上でLDL70mg/dl以上の群を基準として他の群がどの程度脳卒中の発生率が低くなるか(発生率比を算出)を分析しています。

③結果

LDLが70mg/dl以上と比較し、LDLが40mg/dl未満の脳卒中の発症リスク比が以下の通りです。

評価項目リスク低減
主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中など)31%低下(発生率比 0.69)
全脳卒中27%低下(発生率比 0.73)
虚血性脳卒中25%低下(発生率比 0.75)
出血性脳卒中達成LDL-C値との関連なし(Ptrend=0.85)

これらの結果より、LDLコレステロールの数値が70 mg/dL以上の群と比較して、40 mg/dL未満を達成した群の方が脳卒中の発症リスクが低下していることが分かります。

④結論

  1. 脳梗塞の既往がある方では、LDLコレステロールをより積極的に下げる(40mg/dl未満)ことが再発予防に有効
  2. 出血性脳卒中のリスク増加も見られず、安全性も確認された。

⑤日常生活への示唆

  • 血液検査を受けた時は、採血結果でLDLコレステロールの値を確認して主治医の先生と目標値、するべきことについて話し合いましょう
  • 処方された脂質異常症の薬は自己判断で中断しないことが大切です
    ※LDLの値を強力に下げる作用があり、食事療法よりもその効果は高いとも言われています
  • 食事面でも飽和脂肪酸(バターやマーガリン、脂身の多いお肉、加工食品)を控えることがLDLコレステロールを下げる助けになります
  • 抵抗運動(スクワットなど)を行うことを習慣化することもLDLコレステロールを下げる助けになります

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