この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
脳卒中を患うと、主にどちらか一方の手足に麻痺が残存・目立つことが多いです。
だからこそ、脳卒中のリハビリを進めていく際はその麻痺している手足を一生懸命動かすことに注力しがちです。
しかし、実は脳卒中後の運動機能を回復していく上でとても重要な鍵を握っているのは『体幹』なのです。
なぜならば、私たちヒトが手足を円滑に動かす際には、土台となる体幹がしっかり安定していなければならないからです。
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よって、脳卒中後は手足を動かしていくリハビリとともに、体幹のトレーニングというのも平行して行っていく必要があります。
そうですよね。
体幹トレーニングが大切とはいえ…おそらく多くの方が「どんな風に行えばいいのか?」、「何をすればいいのか?」ということにお困りではないかと思います。
そこで今回は…
について、世界中で試されている数ある方法の中から、現在まで最も有効であるとされる体幹トレーニングのやり方や頻度などについて解説していきます。
脳卒中後に有効な体幹トレーニングのやり方
脳卒中患者様における体幹筋力の現状
まずはじめに、「脳卒中を患うと実際に体幹筋力はどうなるのか?」ということについて触れておきます。
国内外で行われたある研究では、脳卒中患者様の体幹筋力を実際に測定した研究なのですが、結果脳卒中後では体幹の前屈と後屈、側屈や回旋動作の際に体幹筋の活動が低下していることが明らかになりました。(Bohannon.1992,Tanaka.1997,1998)
また、脳卒中後体幹の筋肉の大きさ(筋断面積)を調べた研究においては、麻痺が生じていない側に比べて麻痺側では体幹筋の活動量が低下しているということも明らかになっています。(Dickstein.2000,2004)
このように、脳卒中後では麻痺側の手足だけでなく体幹筋の活動も低下することから、外見上はあまり目立たないもののしっかりリハビリを行っていく必要があります。
脳卒中後、どのような体幹トレーニングが有効なのか?
今回、ご紹介したい方法は2012年に発表されたSaeys Wらの研究で用いられたものです。
早速、その方法を以下に示します。
まず、体幹トレーニングは大きく2種類で、仰向けで行う運動と座って行う運動です。
・両膝を立ててお尻を持ち上げる(ブリッジ運動という)
・お尻を持ち上げたまま、左右に動かしその姿勢をキープする
・寝返り運動を行う(左右両方)
・体幹を横に倒す(左右)
・骨盤を左右に動かす
・体幹の回旋運動を行う
・出来るだけ遠い物を取るように手を伸ばす(リーチ動作)
・不安定な物の上に座る(バランスクッションなど)
進め方としては…
①仰向けの運動を20分、座って行う運動を10分、合計30分間で実施しましょう。
②頻度は最低週4回、これを8週間(2ヶ月間)行いましょう。
どれくらい効果があるのか?
上記の体幹トレーニングを8週間実施すると、どれくらい効果があるのか?
まず、このトレーニングを実施した結果、最も向上するとされているのが『バランス能力』です。
バランス能力は、転倒を防げたり、安定して歩くために必要な能力であることから、脳卒中後には必須とも言える力になります。
では、「上記体幹トレーニングを行うことでどれだけバランス能力が向上するのか?」というと…
Berg Balance Scale(BBS)というバランス能力を測定する検査において、平均して約20点近く点数が上がるとされています。
・点数の内訳は以下
0-20点:バランス障害あり
21-40点:許容範囲のバランス能力
41-56点:良好なバランス能力
今回紹介した体幹トレーニングを実施する前の脳卒中患者様のBBSの平均点数は24点でした。
これが、体幹トレーニングを実施後は平均点数が43点まで向上しました。
43点は『良好なバランス能力』に分類されるほど高い点数であることから、この伸びは凄まじいものがあります。
脳卒中後『体幹トレーニング』は必ず実施したいところ
いかがでしょうか?
このように、脳卒中後において体幹トレーニングは特にバランス能力の向上にはかなり有効であることが示されています。
一日約30分間、特に広いスペースなどは必要ないのでベッドの近くなど、転倒リスクなどには十分気をつけながら是非行ってみてください。
最後に〜補足〜
最後に、この研究の対象となった脳卒中患者様の特徴を示します。
・脳卒中発症から4ヶ月以内
・初めて脳卒中を発症
・急性腰痛など体幹に問題がない
・脳幹や小脳病変ではない(大脳半球に発症)
参考文献
・Lateral trunk flexion strength: impairment, measurement reliability and implications following unilateral brain lesion. Bohannon,1992
・Trunk rotatory muscle performance in post-stroke hemiplegic patients. Am J Phys Med Rehabil.Tanaka,1997
・Muscle strength of trunk flexion-extension in post-stroke hemiplegic patients. Am J Phys Med Rehabil. Tanaka,1998
・Activation of flexor and extensor trunk muscles in hemiparesis. Am J Phys Med Rehabil.Dickstein,2000
・Electromyographic activity of voluntarily activated trunk flexor and extensor muscles in post-stroke hemiparetic subjects.Dickstein,2004
・Randomized controlled trial of truncal exercises early after stroke to improve balance and mobility.Saeys W,2012