【脳卒中リハビリ】つま先が床に引っかかってしまう時のリハビリテーション

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患(脳梗塞・脳出血・脊髄損傷など)により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。

今回は、脳卒中後における下垂足のリハビリテーションについて海外の論文を参考に方法論をご提案していきたいと思います。

脳卒中後、多くの方が歩く際につま先が床に引っかかってしまう(以下:下垂足)という問題を抱えるケースが多いのではないかと思いますが、今回お伝えする内容はこのような下垂足に対する効果的なリハビリテーションの方法についてです。

内容自体は、自主トレなどではなく療法士の方と行うリハビリテーションにおける介入方法の提案となっておりますので、特にセラピストの皆さんは最後までご覧いただけると幸いです。

【脳卒中リハビリ】つま先が床に引っかかってしまう時のリハビリテーション

今回ご紹介する論文はこちら

Functional electrical stimulation of the peroneal nerve improves post-stroke gait speed when combined with physiotherapy. A systematic review and meta-analysis.Jaqueline da Cunha M,2021

はじめに

脳卒中後における、下垂足の原因。

そのほとんどは、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)や足趾屈筋群(足の裏の筋肉)の痙縮によるものです。

これにより、足首を挙げることが困難となり歩く際にどうしてもつま先が引っかかりやすくなってしまいます。

その結果として、つま先と床が接触しないように、足を持ち上げ外側から降り出すという(ぶん回し歩行と言います)状態を呈してしまうことが多くなります。

下垂足のリハビリ

近年、このような下垂足に対するリハビリテーションとして『電気刺激療法』というのが有効とされる報告が多数上がってきています。

ある報告では、腓骨神経に対して機能的電気刺激(FES)を行うと、短下肢装具(AFO)を装着するよりも下垂足が改善し、その結果として歩行速度を速くする事が可能となっています。(A.I. Kottink,2004)

ただ、この報告は2004年時点の報告なので、今回はより最近(2021年)になって検証された結果を元に、下垂足に対して電気刺激療法がどのくらい効果的なのか。この点について解説します。

研究方法の紹介

本論文(システマティック・レビュー)の目的は、脳卒中後に下肢麻痺のある患者様に対して機能的電気刺激を適用(腓骨神経に対して)し、その有効性を明らかにすることです。

対象者

対象となった患者様ですが、平均年齢は45歳〜72歳の範囲であり、脳卒中発症からの平均期間は、1ヶ月未満〜108ヶ月近くまで割と幅広いです。

12個の研究で慢性期の脳卒中後の人々を対象とし、3つの研究では急性期と亜急性期の両方の参加者が含まれていました。

また、「脳出血なのか脳梗塞なのか?」という点についてですが、6つの研究で虚血性脳卒中と出血性脳卒中の両方を対象としていたので、今回は脳梗塞も脳出血も含む形となります。

アウトカム

効果判定のアウトカムとして採用された評価は以下です。

・歩行速度

・足関節背屈角度(自動運動)

・立位バランス能力

結果

歩行速度について

それでは、早速結果を見ていきます。

まず、歩行速度ですがこれについては歩行速度が速くなったケースとそうでないケースがあることがわかりました。

脳卒中後遺症患者様の腓骨神経に対して機能的電気刺激を行うことによって、一般的な理学療法に比べて歩行速度が速くなるケース。

それは、専門家(理学療法士など)が側についた状態でリハビリテーションを行った場合のみです。

一方で、腓骨神経に対して機能的電気刺激を行っても歩行速度が速くならないケースもあり、それが自宅等において自主トレでこれを用いた場合です。

このように結果が割れた理由としては『治療の異質性』というのが一つ原因として考えられています。

治療の異質性とは、専門家の監視下と自主トレでは治療の質が異なっていたという可能性です。

これによって、歩行速度に差が現れたのではないかと考察されています。

研究では、監視のない運動と自宅での定期的な活動の量を不正確にコントロールしていたが、監視付きの運動(すなわち、理学療法)には、姿勢、歩行、バランスを改善するための戦略が含まれていた。(Jaqueline da Cunha M,2021)

足関節背屈角度(自動)について

腓骨神経に対して、機能的電気刺激を行うことによって従来の理学療法に比べて足関節の背屈運動は有意に改善することが明らかになりました。

それも、単に足関節を意図的に動かす時だけではなく、歩行中のような無意識の状態で足関節が背屈してほしい場面においても改善が見られました。

この結果は、専門家の監視下もしくは自主トレに限らず改善が見られ、かつ短下肢装具(AFO)を装着するよりも効果がある事がわかりました。

立位バランス能力について

立位バランス能力については、『Berg Balance Scale:BBS』という評価と、『Timed Up & Go Test:TUG』という2つの評価で検証されていますが結果、専門家の監視下もしくは自主トレに限らず改善が見られています。

電気刺激療法は下垂足の改善に効果的である

以上の結果を踏まえ、腓骨神経に対する機能的電気刺激療法は下垂足の改善、そしてその結果として歩行速度やバランス能力の改善にも寄与する事がわかりました。

もし、現在リハビリを行っている最中で下垂足でお困りな方がいましたら試してみてはいかがでしょうか?

参考文献

1)Functional electrical stimulation of the peroneal nerve improves post-stroke gait speed when combined with physiotherapy. A systematic review and meta-analysis.Jaqueline da Cunha M,2021

2)The orthotic effect of functional electrical stimulation on the improvement of walking in stroke patients with a dropped foot: a systematic review.Kottink,2004

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