この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリハビリテーションに従事する医療従事者の方向けて発信する最新エビデンス情報です。
脳卒中後の運動麻痺は6ヶ月以降も改善する!
本日ご紹介する論文
研究の目的
これまで、脳卒中発症後は約6ヶ月を天井に回復の見込みがなくなる、いわゆる『プラトー説』というのが唱えられていました。
ところが近年は、こうした6ヶ月の壁と言われるプラトー説が徐々に覆りつつあります。
今回ご紹介する論文は、実際に海外で行われたシングルケーススタディを元に「脳卒中発症から6ヶ月以降も運動麻痺は改善するのか?」を明らかにすることを目的とした研究です。
対象者
今回の研究で対象となったのは、33歳右利きの男性で発症領域は左放線冠の梗塞です。
急性期における運動麻痺の程度は、右上下肢の完全脱力を呈していまいた。
介入方法
脳梗塞発症からリハビリテーションに関するプロトコルは以下です。
1|発症後〜入院
脳梗塞発症後入院し、発症4カ月まで地元のリハビリテーション病院(3カ月)、大学病院(1カ月)で包括的なリハビリテーション(理学療法・作業療法・言語療法)を受けた。
2|退院後のリハビリ
退院後は同大学病院リハビリテーション科外来にて理学療法、作業療法を脳梗塞発症後2年間行った。
リハビリテーションの内容としては、右指伸筋に対する神経筋電気刺激を発症後4年まで継続的に実施し、発症後3ヶ月から12ヶ月までは神経栄養剤(プラミペキソール2mg,アマンタジン300mg,レボドパ375mg)を処方されたが発症後12ヶ月からは抗血小板薬以外は服用していない。
結果
1|発症〜6ヶ月
脳梗塞発症から6ヶ月後、右指伸筋(MMT;0)を除き右半身の筋力はほぼ正常な状態(MMT;4〜4+)まで回復していた。
右手指の屈筋群はModified Ashworth Scale(MAS)で1+と軽度の痙縮を示した。
2|発症6ヶ月〜1年半
脳梗塞発症から約1年半後には、右指伸筋の筋力が向上し運動範囲の拡大が見られ非常にゆっくりとした経過ではあるが継続的な回復が認められた。
3|発症4年後
脳梗塞発症から4年後には、重力に逆らって動くことができる程度に右指伸筋の著しい運動回復を認めた(MMT;3)。
また、このような運動機能の変化を裏付ける神経学的検査の結果がこちら。
Delayed recovery of the affected finger extensors at chronic stage in a stroke patient: A case report.Jang SH,2017より引用
脳梗塞発症から2ヶ月時点(2-month)では、皮質脊髄路(赤いライン)が遮断されているのが分かる。
ところが、脳梗塞発症から4年後(4-year)では、皮質脊髄路が新たに形成され一次運動野に紐づいているのが分かる。
臨床的解釈
今回の研究は、脳梗塞を発症した1人の男性の経過を追いかけたシングルケースではありますが、彼は最終的に4年後まで運動機能の改善が見られています。
つまり、以上の結果を踏まえると「脳卒中は6ヶ月が天井である」というのは、もはやひと昔前の定説である可能性が高いです。
よって、今後は慢性期においてもまだまだ脳卒中後のリハビリテーションには十分可能性があると私たちは考えています。
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