脳卒中や脊髄損傷後に生じる「痺れ」にはしびれに合わせた電気刺激治療が効果を発揮する

この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が日々脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷、脳性麻痺といった神経疾患後遺症のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、当事者の皆様に向けて発信するエビデンス情報です。
脳卒中や脊髄損傷ではなぜ「痺れ」が生じるのか?
脳卒中(脳梗塞や脳出血)や脊髄損傷、多発性硬化症といった中枢神経(脳や脊髄)の病気にかかると、後遺症として「痺れ」が現れることがあります。
痺れが起きる原因は様々ですが、一説によると感覚を伝える神経の通り道がダメージを受けることで、実際には何も触れていない、あるいは少し冷たいだけなのに脳が「ビリビリ」「チクチク」といった間違った信号として感じ取ってしまうからと言われています。
​この痺れを発症する方は多く、脊髄損傷を経験された方の約77%脳幹と呼ばれる脳の一部が傷ついた方の約48%がしびれを経験しているというデータがあります。しびれは単なる不快感にとどまらず、日常生活や生活の質を低下させる大きな原因となります。
痺れに合わせた電気刺激、「痺れ同調TENS」とは?
電気刺激には様々な種類がありますが、その中に主に痛みや筋肉の強張り(痙縮:けいしゅく)の軽減に特化した「TENS」と呼ばれるものがあります。これまでも脳卒中や脊髄損傷後の痛みに対してTENSは行われていましたが、痺れに対する効果は今回紹介する研究まではほとんど報告されていませんでした。
今回紹介する研究は、患者様ご自身が感じている『ビリビリ』『チクチク』というしびれの感覚と、機械から流す電気の感覚(強さや周波数)をピッタリ合わせる(同調させる)」、しびれ同調TENSという画期的な電気刺激の方法の効果を検証したものになります。

「痺れ」に対するしびれ同調TENSの効果について

中枢神経障害によるしびれ感に対するしびれ同調経皮的電気神経刺激の効果検証:シングルケース実験デザイン(2023)

①研究の概要

脳卒中や脊髄損傷、多発性硬化症によって痺れが生じたの患者様5名を対象として、痺れ同調TENSを数日間行い、痺れの感覚が即時的、そして長期的にどのように変化するかを確認しました。

この研究の結論は以下の通り

全ての患者様で即時的に痺れが大幅に改善
介入終了後も全体として痺れの軽減が持続していた
特定の患者様(脊髄損傷)では介入終了後のフォローアップの時期で痺れの軽減が認められなかった(病気の重症度が関係している可能性あり)

②研究の方法

1.対象者と対象部位

  • 対象: 脳卒中2名、脊髄損傷2名、多発性硬化症1名の計5名
  • 対象となった部位: 腕や手の指など計8箇所
  • 除外基準:

■認知機能障害がある方(Mini-Mental State Examination という認知機能検査の点数が23点以下)

■高次脳機能障害と呼ばれる思考能力や判断力等が低下する症状がある方

■ペースメーカーなどの植え込み型の医療機器がある方

■脳卒中等の中枢神経の病気を併発している方

2.実験方法

  • 研究デザイン:被験者間マルチプルベースラインデザイン
  • ベースライン期(介入していない期間)、介入期、フォローアップ期を28日間の間に実施
  • フォローアップ期は標準的な理学療法のみが実施された
  • しびれ同調TENSの介入の期間は1週間
  • しびれ同調TENSの時間は1日に1時間(標準的な理学療法も実施)
  • 介入期においてしびれ同調TENS実施中は上肢を主とした運動は実施していない

3.しびれ同調TENSの実施方法

  • 痺れが生じている皮膚の神経の上に2つの電極を貼り付ける(電極の間は5cm)
  • パルス幅は50µsecに設定
  • ピリピリやチクチクといった痺れの感覚に合わせるように周波数を10Hzずつ変化させる
  • 痺れの強さは電流強度(mA)を1ずつ変化させる

この手順で痺れの感覚にTENSによる電気の感覚をぴったり合わせるように調整

4.痺れの評価の方法

  • 様々な種類の痛みを評価する「Short-Form McGill Pain Questionnaire」の2の痺れ項目を参考
  • 痺れの強さは11段階の「Numerical Rating Scale (NRS)」を採用

NRSが0(全く痺れがない)~10(耐えられない程痺れが強い)の内どのくらいか?を毎日聴取(介入期はTENS実施前後に聴取)

③結果

初回のTENS実施によりNRSの点数が平均して5.75点(±1.30)改善しており、全ての患者様において初回の改善度合いは非常に高い結果となりました。

(これは例えばNRSが8(耐え難い位かなり強い痺れがある)方がNRS2(少し痺れがある)へと改善するくらい、非常に高い効果があったことを示しています。)

加えて、翌日への持ち越し効果(次の日も電気刺激をしていないのに痺れが和らいでいる)もみられ、繰り返しの介入によりしびれ同調TENS実施前の痺れの感覚が改善する傾向を認めました。

一方、実施前の痺れの感覚が段々と小さくなったこともあり、介入期に時間の経過に伴って痺れ同調TENS実施前後の改善度合いは徐々に低下していました。

痺れ同調TENSの実施期間が終了した後(フォローアップ期)も、5名中4名は痺れの感覚が有意に低下していました。しかし、脊髄損傷の患者様1名のみは介入前と介入後で有意な効果は認められませんでした。

④TENSの鎮痛効果と痺れ同調TENSの痺れ改善のメカニズム

一般的なTENSの鎮痛効果:

  1. 末梢神経(脊髄から伸びた先の神経)に作用する侵害刺激の信号の遮断
  2. 中枢神経(脊髄)に作用するゲートコントール理論(より太い神経を電気で刺激して痺れ等の感覚を遮断)
  3. 中枢神経(脳)に作用する下行性疼痛抑制(TENSの電気刺激によって痛みを抑える神経物質を放出させる)

しびれ同調TENSのメカニズム:

  1. 痺れ感固有の感覚神経を選択的に遮断するbusy line effect (ノイズキャンセリングのようなイメージ)

※メカニズムに関しては現時点ではまだあくまで仮説検証の段階

⑤結論(臨床への示唆)


今回紹介した研究とは別の研究(動物実験)では、神経損傷後早期に電気刺激を行った方が神経を障害後に生じる痛みである神経障害性疼痛の発生を防ぐというデータもあります。そのため、脳卒中や脊髄損傷後に痺れが生じた場合は可能な限り早めに電気刺激によって痛みを感じる経験を少なくすることで、その後の痛みや痺れの発生を抑えることができる可能性もあります

今回の研究でフォローアップ期の改善効果が少なかった患者様は「何となく痺れの感覚と似ているが痺れが消えてはいない」といった発言が聞かれました。勿論病気の重症度も痺れ同調TENSの効果に影響は与えると思いますが、電流強度と周波数を緻密に調整して「電気と元々の痺れがお互いに打ち消し合って何も感じなくなる」という感覚が得られるようにTENSの設定を行うのが、最大限の効果を発揮すると考えられます。

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