この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患(脳梗塞・脳出血・脊髄損傷など)により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
今回は、理学療法士や作業療法士の方向けの内容となっており、『感覚検査を行う時に注意すべき5つのこと』というテーマでお伝えしていきます。
リハビリテーションの現場において、感覚検査は必須といっても良いくらい実施頻度の高い検査になります。
これは、脳卒中や脊髄損傷だけで用いられるということはなく、整形外科疾患においても同様です。
そこで今回は、臨床現場にて感覚検査を行う際に多くの方が誤りやすい注意しておくべき点についてを5つにまとめていきたいと思います。
ぜひ、最後まで後らに頂き明日の臨床に活かして頂けますと幸いです。
感覚検査を行うときに注意すべき5つのこと
1.対象者の意識状態や認知機能を把握すること
感覚検査は基本的に、対象者の方に答えてもらう設計になっています。その場合、前提として対象者の意識状態や認知機能、精神状態に問題がないかどうかを確認しておく必要があります。
仮に軽度の意識障害や認知機能に問題があり、正確に答えられない場合は検査そのものの信頼性が低下することから、実施する前に必ず確認しておきましょう。
2.感覚検査には対象者の協力が必須である
上記でも述べたように、感覚検査は対象者の方に正確に答えて頂くという前提のもと成り立っています。
そのため、感覚検査を実施する際には対象者の方に対して検査内容をよく説明し、気を散らせない、疲労を生じさせない、といった点に留意しておく必要があります。
もし仮に、疲労感を感じやすい方であった場合は、その日に全ての感覚検査を行う必要はありません。
二日間に分けて実施するのも良いと思います。
また、「どう答えたら良いか分からない」と仰る方もいるので、療法士は事前に『答え方』についても説明を行っておくと良いでしょう。
3.療法士が意図する結果に誘導しない
これはすごく大切です。
感覚検査を行う際に、対象者の方に対して暗示を与えたり、意図する方へ誘導する聞き方をしてはいけません。
例えば、「痛みがある方は一般的に感覚が鈍くなりやすい」と検査前に伝えてしまったり、「麻痺がある方は感覚が分かりにくかもしれないですね」などと言ってしまうと、それが暗示となり結果に影響してくる可能性があります。
そのため、療法士はこのようなミスリードを行わないように、フラットな視点で検査を実施することが大事になってきます。
4.ON/OFFだけでなく“感じ方”を教えてもらう
感覚検査を行う際によくやりがちなのは、「感じたor分からない」の二択のみで進めてしまうことです。
感覚検査において、ON/OFF(分かるor分からない)も非常に大切な所見なのですが、これだけだと病態を理解するところまで至らないケースが多いです。
そのため、できる限り対象者の方に対して「どのように感じたのか?」という部分だったり、「触られた強さはどれくらいと感じたのか?」と言った対象者が感じている部分を掘り下げていきましょう。
そうすることで、外からは見えない患者様が感じている世界にわずかでも近づくことができ、治療の選択肢がぎゅっと絞られてくることもあります。
5.検査結果は正確に記録すること
感覚検査によって得られた結果は、正確に記録しましょう。
療法士が「こうなってるかも」という先入観で検査を行ったり、検査結果を自分の意図するように改竄してはいけません。
また、特に急いで検査を行った場合によくあるのが、無造作に感覚検査のチャートに結果を書き込んでしまうことです。
丁寧に検査できていないにも関わらず、「多分こんな感じだろ」と療法士の解釈で検査結果を記入してはいけません。
感覚検査で注意すべきことまとめ
以上が、感覚検査を行う際に注意すべき5つのことになります。
臨床現場において感覚検査を行う際は、ぜひこの辺りに意識しながら行っていただけると良いかと思います。
それでは最後に、上記も含め改めて感覚検査の大切な点についてまとめておきます。
感覚障害の検査は神経疾患の検査の中でも最も難しいものの1つである。なぜならば、その判定はあくまでも患者の主観に頼らなければならないので、患者の協力が得られなければ正確な検査ができないからである。
意識障害や精神障害の患者ではもちろん精密な検査は不可能であるが、このような異常がない人でも問診や検査により疲労したり精神的動揺を示しているときには、正確な成績を得ることはできない。
したがって、初診時に感覚障害があったり、あるいは存在が疑われたりするときには日にちを変えて、改めて感覚検査のみを詳細に行う必要がある。
感覚障害は、神経疾患の局在診断あるいは原因的診断を下すのに大切ではあるが、客観性に乏しい初見であり、これのみに頼ると失敗するので、常にほかの神経学的所見と照らし合わせて、総合判定すべきである。
著;ベッドサイドの神経の診かた.田崎ら,2010
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