この投稿は、『〜脳卒中・脊髄損傷特化型自費リハビリ施設〜脳と脊髄リハビリ研究センター福岡』が、現在様々な神経疾患により麻痺を患い、本気で改善したいと思っている皆様へ、今後のリハビリのヒントとなる情報をお伝えします。
本日は、「脳卒中後痙縮が出現し始めるのはいつか?」というテーマでお伝えしていきます。
脳卒中後の痙縮は、発症後大多数の方が経験する症状の一つであるため大体どのくらいで生じてくるのか、またそれを知ることでリハビリを頑張らないといけない時期というヒントにもなるため、ぜひ最後までご覧頂けたらと思います。
それでは、はじめていきます。
脳卒中発症後、腕の痙縮はいつ発症するのか?
痙縮とは
(少し専門的な話しにはなりますが)痙縮とは、脳卒中後に生じる症状の一つであり一般的に、関節運動の速度に依存した筋肉の伸張に対する過興奮性と定義され、腱反射の亢進、受動的動作に対する抵抗の増加などが生じる現象です。(Kyung,2019)
簡単にいうと、自分の意思とは無関係に筋肉が収縮し関節運動が生じにくくなった状態のことを言います。
脳卒中後は、この痙縮によって思うように身体が動かしにくくなったりといったことが生じやすくなります。
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では、この痙縮は脳卒中を発症後いつぐらいから生じ始めるものなのでしょうか?
ここが今日の本題です。
【結論から】痙縮の発生頻度で一番多いのは発症から“1ヶ月”
今回、脳卒中発症から痙縮が出現するまでの期間を調べるにあたって参考にした論文が以下です。
ひとまず、結論から申し上げると脳卒中発症から痙縮が出現するまでの期間で最も多かったのは発症から1ヶ月ということが明らかになりました。
それでは、この研究で解説されている内容をもとに具体的な日数等について掘り下げていきます。
対象となった脳卒中患者様
対象となった脳卒中患者様の人数は861人で、対象条件としては初発の脳卒中患者様であり、再発などによって生じた方は対象から外れています。
同様にボツリヌス毒素治療などで、過去に痙縮の治療研究に参加したことがある患者様も対象から外れています。
結果
結果は、脳卒中発症から腕の痙縮が発症するまでの期間の中央値は34日でした。
つまりこの結果から、初発における脳卒中患者様の約半数は最初の1ヶ月間に痙縮が発生する可能性が高いことが分かりました。
そして、このうち4分の1の患者様は発症から2ヶ月以降に発症していることが分かり、約12%の患者様は発症から2ヶ月から3ヶ月の間に発症していました。
さらに、3ヵ月以降に痙縮を発症した脳卒中患者様は13%の方に見られました。
・発症から2ヶ月→25%
・発症から3ヶ月→12%
・発症から3ヶ月以降→13%
その他痙縮について調べた研究結果
また、上記でご紹介した研究だけではなくその他同様の研究にも触れておくと…
運動機能低下を伴う初発の脳卒中患者様のみを対象とした研究(Opheim,2014)では、痙性は脳卒中発症から3日後に25%、4週間後に44%、12ヶ月後に46%に出現したとの結果が出ています。
やはり、この研究においても脳卒中発症から約1ヶ月の間で約半数の方に痙縮が発生しているようです。
脳卒中後『痙縮』が発生する時期まとめ
以上の結果から脳卒中後に痙縮が出現し始める時期は、多くの場合発症から1ヶ月以内であることが分かります。
逆にいうと、脳卒中発症後初期は筋肉に力が全く入らない状態がありますが、多くの場合1ヶ月以内には筋肉に収縮が見られ始めるということです。
よって、発症後1ヶ月以内というのは筋肉が使え始める時期でもあるため、しっかりかつ丁寧にリハビリを行っていかなければならない時期とも言えます。
参考文献
1)When does spasticity in the upper limb develop after a first stroke? A nationwide observational study on 861 stroke patients. Kyung, 2019
2)Upper-limb spasticity during the first year after stroke: stroke arm longitudinal study at the University of Gothenburg.Opheim A,2014